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新潟豆紀行Vol.7:ものづくり燕三条の根底にある、DNAに刻まれた越後味噌の味

なかなか手に入らないパン切り包丁、ビールの泡立ちがすごいチタン製のタンブラー、世界中に愛用者がいる爪切り、ノーベル賞の晩餐会で使われたカトラリーなど、金属洋食器の名産地であり金属加工のレベルも世界基準、近年では「工場の祭典」というイベントが話題の…そうです!新潟の「燕三条」のことです!この地域にも豆ロマンはあるんですねぇ。今回ご紹介のお豆は味噌!です。皆さん、毎朝ちゃんと味噌汁を飲んでますか?

越後味噌醸造は創業1771年、酒蔵としてスタートしました。1931年に味噌・醤油を醸造する「越後味噌醤油研究所」に変わり、1960年には越後味噌醸造株式会社が設立。2015年に和僑商店(銀座十石や古町糀製造所の運営、関連会社に、今世司酒造株式会社、株式会社峰村商店)が事業継承し、現在に至ります。日々忙しく、あちこち飛び回っている代表の木龍さん。越後味噌醸造株式会社の社長に就任したのは2016年です。「どうやったら越後味噌が多くの人に知られて、魅力を伝えられるか…と考え、職人や商品、皆さんとお話ししていくと、越後味噌はすごい!ということが分かったんですよ」。

 

 

大袖振大豆を味噌に使うのは珍しい? 

「大袖振り大豆」を味噌で使うのは全国で2社くらい、らしい

越後味噌醸造で使っている大豆は、外国産、新潟県産、そして北海道産です。なかでも北海道産の大豆は、音更町(おとふけちょう)産の大袖振大豆(おおそでふりだいず)というもので、この音更町のみで作られているという希少な大豆。蒸してすぐの状態で食べると、まるで栗のような甘みが感じられるといいます。この大豆、味噌に使っている味噌屋は全国でも越後味噌醸造ともう1つの味噌屋さんくらいで、生産者も「えっ、味噌に使っているんだって?」と驚くほどです。

「以前、この音更町の大豆生産者を訪ねたんですが!大袖振大豆の厳密な生産管理はもちろん、この大袖振大豆って原種なんですよ。非常に珍しいというか、感動しました。現地に足を運んで本当によかったです。だからこそ、越後味噌の魅力を伝えたくて!」。大袖振大豆を使った味噌造りは約2年間の試行錯誤の末、1970年に「袖ふり味噌」として完成しました。

「この袖ふり味噌、噌漬けで使っているんですよ。やや甘口タイプで塩分濃度としては12~13%くらい。最初はしょっぱさ、次にだんだんと甘みを感じて、だんだんと複雑な味が出てきて、コク深く味わいのあるのが特徴です」。

 

 

ずっと木桶を使って仕込み続けます >

今もずっと木桶を使って仕込み続けます

仕込みから完成するまでの期間は約5カ月。昔ながらの味を今も作り続けることができる理由の一つとして木桶があります。この木桶、なんと70個ほどもあって、どれも100年以上前に作られたもの。ほとんどが今も現役です。そして、醸造に必要な味噌の仕込み・米麹造りの技術もずっと受け継がれています。

一番大きい木桶で約4.5トンの味噌を仕込めるそうです。4.5トンって!想像できません!

木桶職人が作ったり直したりして今があります。この太さ!4~5人で編んだそうです。「鉄で修繕した部分は、地震や腐食によって壊れることがあります。しかし、木の部分は壊れない。さすが木桶職人です」。

いろいろな場所に巨大な木桶があります。味噌蔵見学の際には、実際に触ってみてください。

こちらは味噌漬けの作業場。木桶の中をのぞいてみると…

結構、深いです。

茄子120K正の字。なんでしょうか。茄子の仕込み120kgをいくつしたのか、ということでしょうか。「職人たちのメモでしょう!」

 

 

すごい手作業なんです >

昔から変わらない味に込められたすごい手作業

木桶と同じく、越後味噌醸造の伝統が手作業です。生産性とか効率化なんてことが求められるこのご時世ですが、何かと手作業です。「味噌蔵見学の際には動画でお見せすることもあります。ほらぁ、ご覧ください!(タブレットを見ています)こんなところまで!時間掛かりますでしょ!」。

味噌を掘ってます。機械ではなく、スコップで!

味噌、結構重たいんです。木桶のそこからすくって、1回上げるだけでも上腕二頭筋がぷるぷるするというのに、延々と続きます。

足場がないと、ずぶずぶ入っていって、職人が味噌漬けになります。

ちなみに、こちらの味噌は…「燕市産の米と大豆を使った味噌造りでして、地産地消、地域活性化プロジェクトとして進めている味噌です。2017年の夏に向かって仕込んで初めて販売をした分が、おかげさまで完売。第二弾がようやく完成したんです」。このほか、越後味噌醸造の木桶を使って醤油を作ったり、甘酒を作ったり、いろいろなプロジェクトが動いています。

 

 

気になるお味噌は… >

気になるお味噌は…と言いますと!

越後味噌醸造から地域を盛り上げる活動として、ほかにもあります。「地元のお菓子屋さんとコラボレーションをしています。味噌ドーナツ、味噌どら焼きなど、いろいろなスイーツがあります。味噌屋なんですけど、どら焼きだけを買いに来るお客様もいるんですよ」。

そして、味噌の一部をご紹介です。

上味噌1kg

カナダ産の大豆を使ったすっきりタイプ。

特上味噌1kg

新潟県産大豆を使った、コクの深いタイプの味噌。

袖ふり味噌

北海道産の大振袖大豆を使った越後味噌を代表する味噌。

 

味噌は、袋タイプやカップ、グラム数など、各味噌でいろいろなタイプがあります。また、味噌漬けもいろいろな種類があり、お店では試食もできます。

越後味噌醸造では味噌蔵見学を随時開催しています(要予約)。また、1月と2月以外、毎月味噌仕込み体験を実施しています。そして、年に1回のビッグイベントもスタート。「残念ながら悪天候だったんですが、なんと2日間で1,000名以上もご来場いただきました!ありがたい次第です!来年は天候が比較的いい、9月に開催することにしました(ほぼ確定)。皆さん、お待ちしています!」

 

味噌を通した地域活性化、味噌から伝えていく食文化と食育、味噌屋から生まれつながり育っていく人間関係。パッケージに書かれた天下とりという初代の思いは、着実に一歩ずつ、前へ進んでいます。

越後味噌醸造株式会社

[住所]燕市吉田中町5-10

[電話番号]0256-93-2002

[営業時間]9時~18時(土・日曜・祝日11時~18時)

[定休日]年末年始

[駐車場]4台

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