平成27年度の全国道路・街路交通情勢調査の平日昼間12時間の交通量ランキングによると…1位は横浜の保土ヶ谷バイパスで、2位になんと!新潟市中央区紫竹山6丁目(新潟バイパス)がランクイン。こんなにすごい交通量のある新潟バイパス「紫竹山インター」脇に堂々と建つのが「渋谷商店」です。勇と書かれているのは、創業者である渋谷勇二さんのお名前。工場入り口は、この道を通る皆さんは知っていると思いますけど、中は入ったことがないはずですよねぇ。
創業約80年となる渋谷商店。現在は三代目です。大豆や味噌から広がる商品(スイーツとかお菓子とか)を開発している味噌屋さんは全国各地いろいろあります。しかし、渋谷商店では丁寧に、しっかりと、愛情込めて作られる5種類の味噌と、大根・茄子・胡瓜・生姜の味噌漬けセットのみという硬派ぶり。味噌造りひと筋で歩んできました。
また、渋谷商店は昔、道路の向かい側に会社がありましたが、新潟バイパスの建設計画のためこちらへ引っ越し。そしてなんと!またもや建設計画によって、2回目の引っ越しが2018年3月に行われます。
「熟成している味噌があったり、麹室の環境であったり、一度で引っ越すことができないんですよ。半年とか一年かけて、徐々に引っ越さないと渋谷の味が作れないんです」と話すのは三代目の渋谷信夫さん。「味噌屋さんの味の決め手というんでしょうか。豆や麹の扱い方や製法の違いはあるにせよ、この環境が作り出すなんとも言えない味っていうものがありますよね。『あ~渋谷の味噌だ』という本能的に分かる味って言うんですかねぇ。積み重ね受け継いできた伝統の味は、引っ越してもしっかり作らないといけませんよね」。
渋谷商店の伝統的な味噌造り
何種類かの大豆を使い、まずは一晩浸漬(水に漬けることを「しんせき」と言います)させます。そして、昔ながらの製法で煮ます。この大きな釜は2.5トンなんですって!すごい大きさです。そして、大豆を冷ましてすりつぶし、「麹」と塩で仕込み、味噌蔵で熟成させます。商品によって熟成期間が異なり、半年から一年ほど寝かせると完成です。
味噌の味の違いは温度、環境などによって左右されますが、そもそも大豆の品質であったり、大豆自体の処理の仕方によっても味は変化します。また、いろいろな大豆の配分バランスも肝心です。さらに、人の手と麹の関係は結構重要で…「職人の手から味噌への思いが伝わる感じがするというかね。昔ながらの製法を、今でも変わらずにやっていることには理由があって、職人が『これだ!』と考え抜いたアイデアや工夫は、今の時代でも全然通用しますし、なんでも機械化すればいいって話でもないんですね」。
渋谷商店の麹たち。そして、味噌は蔵へ行く
麹室は、麹菌を繁殖させる保温室。室温は30度前後に管理され、菌が活発に活動します。湿った空気と麹独特の香り…麹室には空気中にも菌がいるため「ここにいると元気いっぱいになる!」という人もいるようですから、ついつい取材陣は見学と言いつつも長居してしまいます。麹室の中は、壁や扉、作業台を見てもすべて木。渋谷商店の味噌の軸になっているといっても過言ではありません。
「引っ越しをするとき、どこまで今の工場から移転先へ持って行けるのか、また、どうやって持って行くのかを考えなくてはなりません。また、調合の比率などは数式で管理していますが、蔵に住み着いた菌たちをどうすればいいか悩みますね」と話すのは、専務の渋谷亮さんです。
「ちょっと麹を食べてみますか?」と言われ試食。そして大豆と麹と塩が混ざった熟成前の味噌も!「渋谷商店の味噌は、このコクの深さです!」しょっぱさよりも、甘みやコク、味の複雑さが強く広がります。
「工場の3階で味噌を造り、2階の熟成室で寝かせ、1階で袋詰めです」。生産量や衛生面を考えた、それぞれのフロアの役割。味噌の移動を見ているだけでも、なぜか楽しくなってきます。
味噌屋さんの向こう側を目指して
お待たせしました!そんな渋谷商店の味噌をご紹介します。写真は袋詰めタイプですが、それぞれ、1kgや2kg、カップ詰め500g、10kgタイプなど、いろいろあります。
別製
国産米麹入りの赤味噌タイプ。大豆の甘みを感じ、後味はまるやか。
※写真は1kg袋詰め
別製こし
別製をこしたタイプ。いろいろな料理に活用できる。
※写真は1kg袋詰め
特撰(麹たっぷり)
国産米麹をたくさん使った白味噌タイプの越後味噌。
※写真は1kg袋詰め
特撰こし(麹たっぷり)
こちらも特撰をこしたタイプ。上品でありながら独特な爽やかさも。
※写真は1kg袋詰め
吟醸
国産米、国産大豆、天日塩を使った多少減塩越後味噌。
先日、新潟市で開催された食の見本市では試作段階の甘酒を披露。開発段階とはいえ、発売を待ち望む声も多かったという。また、地元の幼稚園や小学校でも、渋谷商店の味噌の魅力を伝える出張授業も積極的。移転をきっかけに、渋谷商店は新しいステージへ向かう。「今は工場見学を受け入れていませんが、移転をきっかけに、いろいろなことにチャレンジしていきたいです」。三代目の信夫さんと専務の亮さん、そして、渋谷商店のスタッフ全員の思いは今日もコク深い味噌から伝わってくる。
株式会社渋谷商店
[住所]新潟市東区紫竹山3-12-1
[電話番号]025-241-2080
[営業時間]9時~17時
[定休日]第2・4土曜、日曜
[駐車場]あり