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 “新潟愛”にあふれた、ごはんと家族と恋愛の物語

 映画「おんなのこきらい」で注目を集めた五泉市出身の映画監督・加藤綾佳さん。その最新作「いつも月夜に米の飯」がこの秋公開されます。主演を務めるのは、新潟市出身でモデル、女優として活躍中の山田愛奈さん。山田さんは、加藤監督との出会いについて、「本当に態度が悪くて申し訳なかった」と振り返ります。

 

 

「加藤監督とは、東京に出たばかりの時、初めてお会いしました。15、6歳くらいのころかな。その当時はこの業界に全く興味がなくて。特に演技はすごく嫌で、事務所の演技レッスンとかもさぼっていて。とにかく(演技を)やりたくないって反発していました。そんな時に同じ新潟出身という縁で、監督と会う機会を作っていただいて。ただ私はそんな気持ちの時なので、『早く終わらないかな』と思ってすごくふてくされてたんですよ。今じゃ絶対考えられないんですけど、肘つきながら、ストローが刺さったジュースをずっとブクブクしてて。今作の冒頭で、カラオケボックスでメロンジュースをブクブクしてるシーンがあるんです。今となっては笑い話ですけど、あれは監督が私との出会いを気に入って、そっくりそのまま取り入れてくださったんです(笑)」

 

 若さあふれる山田さんの姿が、加藤監督には逆に新鮮に映ったようです。

 

「後に初対面の時の話を聞いたんです。正直『すごい態度悪くてふてくされてて、この子なんなんだ』と思ったらしいんです。ただ、監督が会う新人の子ってだいたい『監督の〇〇観ましたー』とか『監督の〇〇が好きでぜひ作品に出たいです』ということを話すのが大半だったらしく、私みたいな『終わらないかな』みたいな感じが、逆にウケて印象に残ったらしいんです」

 

 この出会いから何年かして、加藤監督の「おんなのこきらい」を見て、山田さんから加藤監督に連絡を取ります。

 

 

「森川葵さんが好きで、『おんなのこきらい』を観たんです。すっごく面白くて感動して、DVD3回借りて、それでも足りなくてDVD買って。監督誰だろうと思って、パッケージの裏面見たら『加藤綾佳』って書いてある。私、会ったことあるし、『何かあったら連絡して』って言われてるじゃんと思って、すぐ連絡しました。それをきっかけに週4くらいで会うようになって。『今、愛奈で1本書いてるから』ってこの作品の第1稿から見せてもらいました」

 

 ちょうどその頃、山田さんはある演出家に怒られたことをきっかけに、演技への考え方をあらため、女優としての道を志すようになりました。

 

「すごく負けず嫌いなところがあって、その演出家の先生への反骨心をバネにしました。アレがなかったら私(女優を)やってない。先生には後日謝りましたけど(笑)」

 

「女子高生でおかみの千代里の役作り」(次のページへ)

 

 「いつも月夜に米の飯」は、新潟で居酒屋を営む母の元を離れ、東京の高校に通う女子高生の千代里が、夏休み間近のある日、母親が失踪したという連絡を受け、新潟に戻ります。当初は反発する気持ちを周囲に当たり散らしていましたがおかみとして働くことになった千代里は、店を守ろうとする料理人・アサダや個性豊かな客の相手をしながら次第その楽しさに気付いていきます。そんな時、母親が突然帰ってきて……。という物語。山田さんは、身勝手な母親に振り回される女子高校生役ですが、山田さん自身と重なるところもあり、いろんな気持ちを理解できたといいます。

 

 

「(撮影)当時、千代里と同い年だったんですよ。千代里って思春期ならではの反抗心がベースにある。その気持ちって誰しもが通るじゃないですか。ちょうどその時、私はオーディションに行って落ちてみたいな経験をしていて。プライベートでのいろいろな気持ちも、演技でアウトプットするいい機会で、逆にスッキリしました。加藤監督からも、『考えないでそのままやってほしい』と言われていました。今あらためて作品を観ると、すごく滑舌悪いし、もっと(うまく)できると思うんです。でもこの作品には、まだ演技を始めたばかりの駆け出しの私にしか出せないことがたくさん詰まっています」

 

 劇中、新潟の郷土料理を中心にたくさんのおいしそうな料理が登場しますが、食事のシーンは難しかったといいます。

 

「実際に地元の方に作っていただいて、料理はすごくおいしかったんです。ただカメラの前で、あまりに普通においしく食事をしていたら『普通に食べてるだけじゃ…』って言われて。そこから見せ方も考えながら撮影に臨みました。本当に勉強になりましたね」

 

(c)2018「いつも月夜に米の飯」製作委員会

 

  一番印象に残っているシーンは物語の終盤、恋心を寄せていた料理人・アサダが出て行くシーンだそうです。

 

「あれはほんとにカメラが回ってない時も涙が止まらなくて。あのシーンのあのセリフは、本当に感情が高ぶって心から出ました。アサダ役の和田さんも口パクで『ありがとう』って言ってるんですけど、完全にアドリブなんです。試写で見た時、本当に泣きそうになりました」

 

「新潟の皆さんににぜひ観てほしい」(次のページへ)

 新潟出身の監督、主演に加え、オール新潟ロケとまさに“新潟愛”にあふれた作品となった本作。山田さんも新潟の方々に観てほしいと言います。

 

「見慣れた風景や、方言、郷土料理がたくさん出てくるので、新潟の皆さんにはすごく親しみやすいと思います。最終的にいいお話になっているので、観た人の心にちょっとでも引っ掛かってくれたらうれしいです」

 

 

 この映画主演をきっかけに女優としてさらなる飛躍を目指す山田愛奈さん。最後に女優としての今後の目標を聞きました。

 

「簡単ではないんですけど、年齢関係なく、さまざまな方々に覚えていただける女優になることが一番理想。そのためにも、全国で放送されるようなドラマや映画に、今後も出演していきたいと思ってます」

 

 

 

(c)2018「いつも月夜に米の飯」製作委員会

 

◆作品概要
いつも月夜に米の飯
脚本・監督/加藤綾佳 出演/山田愛奈、和田聰宏、高橋由美子、渡辺佑太朗
◆SPOTTED PRODUCTIONS配給 【PG12】

上映館/シネ・ウインド(9月22日(土)~10月12日(金)公開)

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