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演劇集団・Accendere最新公演に注目! フィクションに潜むリアルに迫る

 

 

 

新潟で継続的かつ真剣な演劇創作を行うことを目的に結成された演劇製作集団・Accendere(アッチェンデレ)。フリーランスの女優として県内幅広く活動してきた先川史織さんを代表に、新潟の演劇界で活躍していた大井南さん、岡田康之さん、内藤陽介さん、石川直幸さんの5名で2015年秋に旗揚げしました。

 

これまでに、旗揚公演「半神」、第2回公演「プルーフ/証明」と人間の本質に迫る物語を上演し、いずれもチケットが完売になる盛況っぷり。その確かな実力で、新潟演劇界で、すでに大きな存在感を放っています。

 

そんなAccendereが8月に最新公演を開催。今回は、新潟県出身の劇作家・前川知大による戯曲「太陽」に挑みます。

 

稽古の様子

 

7月某日、絶賛稽古中の皆さんに、Accendereのことや最新作について、お話を伺ってきました。

 

大好きな演劇と継続的に付き合うために(次のページへ)

 

 

Accendereのメンバーはそれぞれに仕事をしながら、演劇活動に取り組んでいます。それには、大好きな演劇を真剣に続けていくための共通の認識があるそうです。

 

岡田「『劇団』というと、夢を追っている若者たちが頑張ってるみたいなイメージを抱く方も多いと思います。僕たちも夢を追っていないわけではありませんが、全員が社会人として生き方を確立した上で、使える時間の中でお芝居に打ち込もうっていうスタンスです。飯の食いぶちは別にあるけど、舞台もやる。でも、お芝居はプロに負けないくらい真剣にやるからねって。僕らは社会人として生きていて生活がそこで保障されているから、余暇の時間をお芝居に注ぎこむことができる。だからこそ、プロとは違ったお芝居との継続的な付き合い方ができるんじゃないかって考えています。演劇も社会生活も、どちらも両立するってことに価値を見いだして活動しているところが特殊かもしれないですね」

 

こうして続けてきた活動も3年目を迎えました。これまでに上演してきた作品を通して、Accendereの皆さんには大きな反響が届いています。

 

先川史織さん

 

先川「それぞれが結成前から活動しているので、『あの人たちが一緒にやるんだ!』って期待して観に来てくださった方も多いですし、『期待通りで満足できました、良かったです』っていう声もたくさんいただいています。ただ、本人たちの耳に届くのはどちらかといえばお褒めの言葉の方が届きやすいんだろうなとは思うので、『あれ、私は面白くなかったな』『もっとこうだったらいいのに!』といった、いろんな意見をフェアに聞き入れられる団体でいたいなと思っています」

 

内藤「前作のときに行ったアンケートでは、褒め言葉にしろ、批判にしろ、しっかり書いてくれている人が多かったのが印象的でした。自分の人生を照らし合わせて書いてくれた方もいて、ちゃんと作品として皆さんに響いたのかなとうれしくなりました」

 

岡田康之さん

 

岡田「皆さん『楽しかった、面白かった』だけじゃなくて、3行4行びっちり書いてくれていて、それがすごく励みになったんですよね。あんなに力の入った、熱量のあるアンケートを読んだのは個人的には演劇人生の中で初めてでした。これからも、期待を裏切らないように努力し続けることがお客さんに対して向かい合うことなんじゃないかなと感じています」

 

大井「(作品を)ちゃんと作る団体っていう評価が広がって、皆さんの期待値も高まっている感じがありますね」

 

自分たちが熱量を持って演じられる作品ってなんだろう(次のページへ)

 

 

観る人の心に響く、思いのこもった作品を作ってきたAccendere。前作までの好評を受けて、8月に上演される第3回公演では作品選びから悩んだそう。

 

 

 

 

内藤陽介さん

 

内藤「昨年上演した前作『プルーフ/証明』が私たちにとっても面白過ぎたんです。やっぱりそれだけの熱量でやれたから皆さんに楽しんでもらえたんだなって感覚があって。じゃあ自分たちが次回、熱量を持って楽しく演じられる作品ってなんだろうって、すごく悩みました。そんな時に何年か前にテレビをなんとなく見ていて、『あ、なんか演劇やってる』ってたまたま見た作品を思い出して。最初から観たわけじゃなくて、作品の盛り上がりのシーンだったんですが、なにか強烈なものを感じたんです。数年たってから、自分があの時観たのは『太陽』って作品だったんだって分かって、DVDを買ってよく見ていて。自分の中で今一番面白いのはこれかなって、メンバーに紹介したら気に入ってくれました」

 

メンバー全員が「次はこの作品!」と感じたという『太陽』は、世界的に起こった大規模なバイオテロにより拡散したウイルスで人口が激減した近未来の日本が舞台。感染者の中から奇跡的に回復し、太陽光を浴びることができない欠点を持ちながらも人間を上回る頭脳と肉体を手に入れた新人類・ノクス、そしてひっそりと生活を続ける普通の人間たち・キュリオの姿を描いた寓話(ぐうわ)的群像劇です。

 

内藤「『プルーフ/証明』は、とにかく本当に分かり合えない二人の話だったんです。お互いちゃんと思ってるし好きだからこそ言葉で伝えるのに、それがひたすら地雷を踏んで。分かり合えないって本当に辛いんだなって思って。その上演後に、『太陽』をあらためて見て、これも多分同じだなって感じたんです。キュリオとノクスっていう、全く別々の人間が、必死に自分の思ってることを伝えるだけなんですけど、本当に分かり合えないというか。その圧倒的な分かりあえなさがなんだか好きで。あとは、近未来の社会問題を扱っているように見えるんですけど、自分自身がどう決断するかっていう、誰にでも当てはまるテーマがちゃんと描かれている部分も本当に好きですね」

 

石川直幸さん

 

石川「好きだからこそ、言葉を重ねて相手を理解しようとする。だから一見けんかのように見えるぶつかり合いのシーンも愛がないとだめなんですよね。無関心だったら、相手に何を言われてもシャットアウトすればいい。むしろ『嫌い』とか『好き』の方がコミュニケーションしてる。そういう実際のコミュニケーションから生まれるものが無限に面白いし、それがあるから稽古してるし、演劇をやってるんだと思います。そういう懐の深さがこの脚本にはありますね」

 

岡田「いい脚本って広い間口と多くの人に共有できる普遍的なものを持っているんですよね。今回の『太陽』は社会的なメッセージも散りばめられているんだけれども、登場人物たちのドラマとして、ある種エンターテインメントとして楽しめる。そして、観終わった後に『あれって今僕らが生きている時代の、あの問題と同じことだな』って考える。フィクションの世界に身を投じることで、それを鏡として現実に出合うみたいな。根源的なドラマの面白さを感じています」

 

新潟の演劇界を担う精鋭が集結!(次のページへ)

 

 

また、今公演には、新潟の演劇界を担う他劇団の俳優も多数出演。Accendereのメンバーにとっても、刺激になっているようです。

 

大井 南さん

 

大井「最初は私が主人公の一人を演じる予定だったんですが、本番まっただ中の8月に出産が決まり、出られなくなったんです」

 

先川「それで、飯塚陽(いいづかみなみ)ちゃんに出てもらうことになり、もう一人の主人公は高田遼太郎くんに演じてもらうことになりました。二人ともすごくいい役者さんなので、『もっとこう感じてほしい』と伝えると、『そう感じるなら、どう表に出るかな』っていうところまできちんと考えて、体や声にダイレクトに出てくれるんです。だからすごく話しがいがあって、本当にいい役者さんに出会えたなと感じています」

 

飯塚陽さんと高田遼太郎さん

 

岡田「二人とも、打つと響くんですよ。アドバイスをするとその言葉の意味をちゃんと考えてくれるし、周りの空気に影響を受けてくれる。大人も負けてらんねえなって強く思うくらい、大きな刺激を受けています」

 

大井「観ていると、『あ~、私もお芝居したい』ってなるんですけど、陽ちゃんも、すごく一生懸命やってくれているので、『そうなるのか~!』と勉強になります。若い子のパワーって本当にすごい!」

 

新潟の演劇界の精鋭が集結し、作り上げる『太陽』は、8月24日(金)から26日(日)にわたって、りゅーとぴあで上演されます。フィクションの世界を通して、人間の本質に迫る物語は見逃せません。

 

内藤「お笑いライブに笑いに行くとか、ミュージカルを見てハッピーな気持ちになるとか、そういう感じではありませんが(笑)。僕自身、『そんなこと言ってくれるなよ・・・・・・』みたいな心に刺さる作品が好きなので、僕みたいな変な人にはぜひ観に来てほしいです。どんな人にでも刺さるテーマだと思うので、たくさんの人に足を運んでいただけたら」

 

岡田「新潟で、新潟の人間が作っております。東京で活動しているプロの劇団を観るのとはまた違う価値があることを前提に、それを楽しめる人が増えてほしいなと思っています。新潟で演劇人として生きる僕らの生きざまを感じてもらえたらうれしいです。興味を持ったらぜひ観てください。損はさせません」

 

 

◆公演情報

Accendere 第3回公演「太陽」 チケット発売中

8.24(金)~26(日)開催 

会場/りゅーとぴあ スタジオB 

時間/8月24日(金)19時、25日(土)(1)14時 (2)19時、26日(日)14時 

料金/一般2,500円、高校生以下1,000円(全席自由・当日各500円増) 

備考/未就学児入場不可 

問い合わせ/先川 ℡090-5438-7853 

 

出演/先川史織、内藤陽介、石川直幸(以上、Accendere)、高田遼太郎(舞衆一ノ太刀)、飯塚陽、後藤忠彦(劇団@nDANTE)、山田好宏(劇団ハンニャーズ)、吉田わかな(塩会)、平田セイイチ(東区市民劇団 座・未来)

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