観る人の心に響く、思いのこもった作品を作ってきたAccendere。前作までの好評を受けて、8月に上演される第3回公演では作品選びから悩んだそう。

 

 

 

 

内藤陽介さん

 

内藤「昨年上演した前作『プルーフ/証明』が私たちにとっても面白過ぎたんです。やっぱりそれだけの熱量でやれたから皆さんに楽しんでもらえたんだなって感覚があって。じゃあ自分たちが次回、熱量を持って楽しく演じられる作品ってなんだろうって、すごく悩みました。そんな時に何年か前にテレビをなんとなく見ていて、『あ、なんか演劇やってる』ってたまたま見た作品を思い出して。最初から観たわけじゃなくて、作品の盛り上がりのシーンだったんですが、なにか強烈なものを感じたんです。数年たってから、自分があの時観たのは『太陽』って作品だったんだって分かって、DVDを買ってよく見ていて。自分の中で今一番面白いのはこれかなって、メンバーに紹介したら気に入ってくれました」

 

メンバー全員が「次はこの作品!」と感じたという『太陽』は、世界的に起こった大規模なバイオテロにより拡散したウイルスで人口が激減した近未来の日本が舞台。感染者の中から奇跡的に回復し、太陽光を浴びることができない欠点を持ちながらも人間を上回る頭脳と肉体を手に入れた新人類・ノクス、そしてひっそりと生活を続ける普通の人間たち・キュリオの姿を描いた寓話(ぐうわ)的群像劇です。

 

内藤「『プルーフ/証明』は、とにかく本当に分かり合えない二人の話だったんです。お互いちゃんと思ってるし好きだからこそ言葉で伝えるのに、それがひたすら地雷を踏んで。分かり合えないって本当に辛いんだなって思って。その上演後に、『太陽』をあらためて見て、これも多分同じだなって感じたんです。キュリオとノクスっていう、全く別々の人間が、必死に自分の思ってることを伝えるだけなんですけど、本当に分かり合えないというか。その圧倒的な分かりあえなさがなんだか好きで。あとは、近未来の社会問題を扱っているように見えるんですけど、自分自身がどう決断するかっていう、誰にでも当てはまるテーマがちゃんと描かれている部分も本当に好きですね」

 

石川直幸さん

 

石川「好きだからこそ、言葉を重ねて相手を理解しようとする。だから一見けんかのように見えるぶつかり合いのシーンも愛がないとだめなんですよね。無関心だったら、相手に何を言われてもシャットアウトすればいい。むしろ『嫌い』とか『好き』の方がコミュニケーションしてる。そういう実際のコミュニケーションから生まれるものが無限に面白いし、それがあるから稽古してるし、演劇をやってるんだと思います。そういう懐の深さがこの脚本にはありますね」

 

岡田「いい脚本って広い間口と多くの人に共有できる普遍的なものを持っているんですよね。今回の『太陽』は社会的なメッセージも散りばめられているんだけれども、登場人物たちのドラマとして、ある種エンターテインメントとして楽しめる。そして、観終わった後に『あれって今僕らが生きている時代の、あの問題と同じことだな』って考える。フィクションの世界に身を投じることで、それを鏡として現実に出合うみたいな。根源的なドラマの面白さを感じています」

 

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