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稲川淳二が“令和初”の「怪談ナイト」で魅せる、27年目の新境地

「今年もあいつがやってくる」のキャッチフレーズでおなじみの「MYSTERY NIGHT TOUR 稲川淳二の怪談ナイト」。現代における怪談の第一人者・稲川淳二さんが全国各地を巡り、恐怖と切なさや懐かしさが同居した極上の怪談を届けてくれる同ツアーが、今年で驚異の27年連続開催を迎えました。

 

「以前から、『怪談は70歳を超えてからじゃないと』と思っていたんです。私の怪談は各地に足を運んで、その土地に落ちている話の破片を拾い集めるところから始まるのですが、話をしてくれる方の多くが高齢のおじいちゃん、おばあちゃんなんですね。みんな実に味わいがある。怪談の中には色っぽい話なんかもあるけど、歳を取ると妙な生々しさや脂っ気が抜けて気負わずに話せるし、多少枯れてるくらいのほうがいいですね」

 

70歳を超えた今こそが、怪談を語るにはベストだという稲川さん。さらに今年は、平成から令和へと元号が変わり、新しい時代が幕を開けてから初めてのツアー開催となります。

 

「今までのツアーはあまりテーマを持たせなかったんですが、新元号を迎えて気分も新しいし、70代になったし。それで今年は、『歴史にならない歴史』がテーマかな、と。『歴史』とはずっと続いていくもの。『歴史にならない歴史』ってのは、その当事者しか知らない、当事者が亡くなったら消えてしまうものですね」

 

 

「歴史にならない歴史」はどこにでもある。そのことをより意識するようになったのは、60歳の時に開いた同窓会での出来事が関係しているといいます。

 

「高校時代ですから半世紀ほども昔のことで、町の景色も状況も当時とはまるで違う。でも、同級生で集まると不思議なもので、今はもう無くなっているんだけど、我々の中には校舎も細い路地も向かいの食堂も近くのパン屋も、当時と同じようにあるんです。すでに見ることができなくても、私たちが生きている以上それらは存在する。私たちがいなくなったら消えてしまうけど、いる限りは話ができる。まさにこれは、『歴史にならない歴史』ですよね」

 

 

去年の86倍の面白さ!? 長い年月を経て完成した新作怪談が登場(次のページへ)

 

 

「怪談って破片を集めて作るんですね。例えるなら考古学のようなもので、何かの破片をいくつも集めて観察して、『これはつぼかな?どんぶりかな?』と考える。別のところからも破片が出てきて、さっきの破片と合わせると一つのつぼになった。そんな風に、集めて、整理をして、組み立てていくのが私の怪談作り。でも、今年話す怪談だから最近の破片というわけではなく、話になるまでに長い時間を費やすものもあります」

 

 

今回初披露する怪談の中にも、稲川さんの心に引っかかっていた破片が長い年月を経て形になった、とっておきの話があるんだそう。これまでの“稲川怪談”とは趣が異なる意欲作をメインに据えた今年のツアーは、「去年の86倍くらい面白くなるかも」と稲川さん自身が太鼓判を押します。

 

「ふた昔くらい前かな?終戦記念日の新聞に小さく載っていた、特攻兵を見送る女学生の話がやたらと印象に残っていて。それに合う破片がようやく見つかったので、今年こそ話をまとめようと思ったんです。それが1週間経っても全然まとまらない。諦めて眠りについたら頭の中でどんどん破片がつながっていって、慌てて書き起こしたら、たったの50分で完成してしまった。しかもそれがすごくいい話だったんです。自分じゃない誰かの仕業だなと思いましたよ(笑)。人の思いや歴史が感じられて、心をジーンとさせてくれるきれいな話になりました。ほかには、明るい日差しの中かげろうが立って、その奥にセピア色の風景が浮かび上がってくるような、今までの怪談とは違う雰囲気の話も披露します。忘れかけていた思い出がふっとよみがえる。私の怪談を聴きながら、そんな体験をしてもらえたらうれしいですね」

 

 

「怖さ」と共に情緒や懐かしさが漂い、時には優しさや切なさがにじむ。その独特の味わいこそが、“稲川怪談”の神髄です。

 

「昔、落語と怪談が似てると言われたことがあるんですが、それは全然違う。落語は素人にはマネできませんが、怪談っていうのは日本人なら誰でも1つは知っている。怪談の怖さは身近にある怖さです。『誰でも話せる』ということは『すぐそばにある』ということですからね。今の怖い話というと、ホラーやスプラッターのような狙いすぎた恐怖や残忍な表現が多い。それは『ショック』であって、怪談の怖さとは別物なんですよ。怪談っていうのは、昔からある風習や行事が基になっていて、怖いけど、あったかくて懐かしい。言いようのない景色が浮かんでくるような、じわじわと迫ってくる怖さなんです」

 

まるで縁日やジェットコースターのような、誰もが楽しめる怪談を(次のページへ)

 

 

「怪談=暗くて重い」というイメージは大間違い。稲川さんの豊かな個性が発揮されたステージ、そしてそこで語られる怪談は、老若男女みんながそろって楽しめる、まるで縁日のようなものだといいます。

 

「怪談は笑っても騒いでも、どんな風に楽しんでいただいてもOKですよ。形がないものですから。孫とおばあちゃんが一緒に聴きにきてくれたり、全世代が楽しめる舞台なんてまるで縁日みたいでしょう? 生で聴く怪談は、ジェットコースターとも似ているんです。その場から逃げられないから、怖くなって周りの様子をうかがう。それで、誰かが先に悲鳴を上げたりすると盛り上がりますよね(笑)。赤の他人同士なのに、不思議とつながりや一体感が生まれる。そこが怪談の面白さでもあります」

 

全国各地、さまざまな人たちの思いが詰まった「歴史にならない歴史」や「破片」。それらを拾い集めて生まれる稲川さんの情緒あふれる怪談は、古来より日本人の間で親しまれてきたさまざまな怪談と同様に、次代へつながり、語り継がれていきます。

 

「いつも手紙をくれる小学生の男の子がいるんです。『お父さんは毎年ツアーに行ってるけど、僕は子供だから参加したことがありません。大きくなったら参加します』って。それで、『お父さんから聴いた怖い話が面白かったので、よかったらツアーで使ってください』って書いてくれてたんだけど、それ、私が話した怪談なんですよ(笑)。しかも驚くことに、内容が間違ってないんです。お父さんがしっかり聴いて伝えてくれて、男の子が覚えてくれている。『なんだ、私の怪談もちゃんと残っていくじゃないか』とうれしくなりましたね。だから、本気で話し続けていかないといけないですよね」

 

ツアー先でも1、2位を争うほど、毎年すさまじい盛り上がりを見せるという新潟公演は、「『本当にこれから怪談が始まるの?』というくらいボルテージが違う。ロックコンサートみたいですよ(笑)」と稲川さんも大絶賛。そんな新潟のファンへ向けて、今回Komachi MAG.が特別にビデオメッセージをいただきました。さらに磨きがかかった話術と珠玉の怪談を堪能できる、令和初の「稲川淳二の怪談ナイト」をお見逃しなく!

 

 

 

◎公演情報

MYSTERY NIGHT TOUR 2019 稲川淳二の怪談ナイト

【会場】りゅーとぴあ・劇場

【日時】9月23日(月・祝)17時30分開演 

【料金】 5,500円(全席指定)

【備考】チケット/発売中。未就学児入場不可

【お問い合わせ】FOB新潟 ☎025-229-5000

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