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関西弁の新しい「忠臣蔵」登場!中村義洋監督が語る映画誕生秘話

 11月22日(金)から公開される映画「決算!忠臣蔵」。忠臣蔵といえば殿のために忠義を誓い仇討ちをした四十七士の話ですが、本作はその討ち入りにかかる“お金”にフォーカスしたもの。Komachi MAG.は、この映画のメガホンを取った中村義洋監督に作品についてお話を伺いました。映画化の発端は企画プロデュースの池田史嗣さんからのオファー。時代劇が好きで忠臣蔵も好きだった中村監督はこのオファーを快諾したそうですが、思いも寄らない壁が待ち受けていたそうです。
 
「自分が後に脚本を書くとき苦しむと思っていなかったので、『これはいい企画見つけてきたね、これは面白いよ』って飛びつきましたね。『やるやる、俺やる!』って感じでした」。
 
しかし、同意したはいいものの、原作は大石内蔵助が残した会計帳簿から忠臣蔵を読み解いた、山本博文さんの著書「『忠臣蔵』の決算書」。いわばノンフィクションです。
 
「持ち帰って読んでみたら、物語ないんだ…って(笑)」。
 
ストーリーがないものから脚本を作り上げることの難しさを痛感した中村監督は、脚本を書き始めるまでに3カ月もかかったそうです。
 
「書けなかった間ずっと古今東西いろんな忠臣蔵を読んで、映画とかドラマとかも観て、資料を調べて、忠臣蔵というか浅野家を調べ尽くしました。いざ書き始めても調べてしまったがゆえの大石内蔵助の立派な人格がより明確になったので、コメディーに仕上げられるのかと不安になったときもありました」。
本作をコメディーにするのは、池田プロデューサーの意向であり、中村監督の意見でもありました。しかし忠臣蔵は四十七士が主の敵を討つ一大悲劇。さらに脚本が難航していた監督は、赤穂浪士と浅野内匠頭の妻・瑤泉院がまつられている泉岳寺にお墓参りへ出かけそこである案がひらめいたそうです。
 
「(討ち入りの軍資金は)ほとんど全部、瑤泉院のお金だっていうのに気づいた時、(金を使う内蔵助が)怒られるっていうのが面白いと思ったんです。これはいけるかもしれないって思って書き始めました。チームの話みたいになるんじゃないかと思って、お金の使い方がわからないのは内蔵助だけでいいから、あとはサポートメンバーを誰にするか。四十七士の中の誰がその時、どこにいたかというのはほとんど史実に基づいて書いています。江戸中期、特に赤穂事件に関してはいっぱい史料が残っていて、彼らは結構手紙のやり取りもしているので、誰がどこにいたかは明確になっているんです」。
 

本作で大石内蔵助を演じるのは堤真一さん、その旧友で勘定方(経理担当)の矢頭長助を演じるのはナインティナインの岡村隆史さん。関西出身の二人がW主演を務めます。キャスティングには監督も参加されたそうです。

「キャスティングはだいたいプロデューサーが考えていましたけど、僕からアイディアを出すときもありました。脚本が関西弁なので、(主役も)ネイティブの関西弁を話す人の方がいいだろうって絞られたんです。関東圏の全く標準語の人に無理に方言指導する映画じゃないよなって。堤さんは兵庫県出身だし、僕の考えた内蔵助像の「家臣思い」っていうのは絶対外せなかった。ほかの家臣たちも敬意っていうのともちょっと違うんだけど、愛着というか内蔵助を見る目が愛にあふれているのではないかと思ったんです。いずれ豪華キャストになると思ったので、下手な人を選んじゃうと内蔵助にならないなと。堤真一さんだったらいろんな俳優さんから尊敬されていますしね。対して岡村さんが演じた矢頭長助は、山本先生の原作もそうだけど、調べれば調べるほど、しょぼい(笑)。これはチームの話だけど、バディムービー、相棒モノでもいけるなと思って、それをセリフや行動じゃない、たたずまいだけで(内蔵助と長助の)差を表したかった。岡村さんには申し訳ないけど(堤さんとは)身長差もあるし。実際、長助は家柄の差とか年収の差とかいろいろコンプレックスもあっただろうし、そういうのを出してくれそうだったのが岡村さんでしたね。脚本を書き上げるのが長くかかった中で、完成する前に岡村さんのキャスティングが決まったから、彼寄りに書き換えている部分もある。自分の脚本をどう演じてくれたかではなく、一緒に作っていったようなところがあります。初めて顔合わせしたとき、本当にプライベートだと声がちっちゃい。かといって暗い印象ではないんで、声の大きさはそれでいいから、もうちょっと内蔵助に対してふてくされた暗い思いみたいなものを足せば、もう岡村さんそんなに芝居しないでいいと思いますよみたいな話はしました」。

 

 

常連から初参加組まで、豪華キャストが勢ぞろい!

 

堤さん演じる大石内蔵助と岡村さん演じる矢頭長助。二人を中心に劇中にはコテコテの関西弁が飛び交います。関西弁で脚本を書き上げたのは、中村監督のこだわりだったそうです。
 
「時代劇で使われる言葉は難しいのですが、僕は時代劇が大好きだから、案外そういうのクリアしちゃうんですよ。あんまり悩まないで時代劇の脚本を書けるので標準語でもよかったんだけど、関西弁にしたら、目下から目上への言葉使いがクリアされるんです。軍資金の存在を知る仲間として、上級藩士と下級藩士の差がないチームにしたくって、その時、関西弁がすごく便利というか。敬語は敬語でも緻密さが抜けるんです。「違いますか?」が標準語だったら「そうではありますまいか?」になっちゃうのを、関西弁だと「ちゃいますのん?」とか。一応それも丁寧語だし、親しみとか親密さはすごい出るなと思って、取り入れてみたんですよね。一回関西弁で脚本書いてみたら、いけるなっていう話になりました」。
 
劇中には岡村さんのほかにも、西川きよしさん、桂文珍さん、木村祐一さんといった芸人さんが多く出演されています。現場の雰囲気はどのような感じだったのでしょうか?
ⓒ 2019「決算!忠臣蔵」製作委員会
 
「その辺は堤さんがいてくれれば、ちゃんとお芝居するしかないんだなってみんな思ってくれたと思います。特別な演技指導はありませんでした。芸人さんというよりも、僕とやるのが初めてか初めてじゃないか、僕の映画の場合はこうなんですよっていうことがわかっているかどうかだったと思います。特に時代劇だしアドリブも効きませんから」。
 
阿部サダヲさん、妻夫木聡さん、竹内結子さん、濱田岳さんら監督のこれまでの作品に何回か出演されている俳優さんも数多く出演されています。
 
「単純に何本も出演していただくのはやっぱりいい役者さんだからっていうのが前提であって、脚本を誤読してこない人。プライベートや現場の合間にしゃべったりしていて、人柄とかわかっているので、この人がそういう風に読むんだったら、もしかしたらその可能性もあるね、ぐらいまで信用できる人たちなんですよ。一方、堤さんと岡村さんとは初めてで、わからない部分があったので、最初は演技を見るのに専念してしまいましたが、二人ともすごく良くて、初日で全然大丈夫だとわかったので取り越し苦労だったんですけど。(鈴木)福ちゃんとか、鈴鹿(央士)くんとか若手には演技指導しましたが、彼らがちゃんとでききるようになったら、その後、ようやく(濱田)岳にふざけた演出ができるという感じですね(笑)」。

本作には「割賦金」→「退職金」というように、当時の言葉を現代の言葉に置き換えて、字幕で表示してあります。同時に金額も「両」「文」ではなく「円」で計算し直して表記してあるので、とてもわかりやすくなっています。
 
「(原作者の)山本先生は“そば指数”っていう言い方をしていて、例えばそば一杯16文だから、現代では、例えば480円として換算すると、1文30円、1両12万円という目安を立てておられます。(これに準じて)自分で電卓で計算して、現代のお金に換算しました。江戸から一人来たから3両渡しましたって電卓はじくと36万円って出るし、現代の金額に置き換えた時、自分でクスっとしちゃったのでお客さんもその方がいいなと思って。ずっと映画でお客さんに何両何文はいくらかって計算させるのが嫌だったんです。この間、東京国際映画祭で上映してもらったときは、英語字幕がついてたから、下にUSドルがついてた。USドルまで出るんだって面白かったですけどね(笑)」。
 
最後に公開を楽しみにしている新潟の人にメッセージをいただきました。
 
「忠臣蔵を知らない人も十分楽しめるように作りました。忠臣蔵を知ってる人も驚くような、でもこっちが本当だったんじゃないかって思えるような忠臣蔵。そして新たな(新発田出身の)堀部安兵衛。是非楽しみに見に来てください」。
 
「決算!忠臣蔵」は11月22日(金)公開です。

ⓒ 2019「決算!忠臣蔵」製作委員会

 
 ◎プロフィール
中村義洋(なかむら・よしひろ)/1970年生まれ、茨城県出身。主な作品は「アヒルと鴨のコインロッカー」(2007年)、「チーム・バチスタの栄光」「ジャージの二人」(08)、「フィッシュストーリー」「ジェネラル・ルージュの凱旋」(09)、「ゴールデンスランバー」「ちょんまげぷりん」(10)、「映画 怪物くん」(11)、「ポテチ」(12)、「みなさん、さようなら」「奇跡のリンゴ」(13)、「白ゆき姫殺人事件」(14)、「予告犯」(15)、「残穢【ざんえ】ー住んではいけない部屋ー」「殿、利息でござる!」(16)、「忍びの国」(17)。本作の同名小説も執筆し、現在発売中。

 

◎作品情報
「決算!忠臣蔵」 
11月22日(金)公開
原作/山本博文
脚本・監督/中村義洋
出演/堤真一、岡村隆史、濱田岳、横山裕、妻夫木聡、荒川良々、西村まさ彦、木村祐一、橋本良亮(A.B.C-Z)、寺脇康文、桂文珍、竹内結子、西川きよし、石原さとみ、阿部サダヲ 
HP/chushingura-movie.jp
配給/松竹  
上映館/ユナイテッド・シネマ新潟、イオンシネマ新潟南&新潟西&県央、T・ジョイ長岡、J-MAXシアター上越

 

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