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音楽で街を、人を、時代を繋ぐ。/落合みつを

 落合みつをさんは、シンガーソングライターとして、自作の歌で新潟の良さを全国の人たちに伝えると同時に、ライブの旅で訪れるそれぞれの土地のことを新潟に持ち帰り、広く知らせることで、長く活動を続けています。

 

 「新潟は、僕自身が生まれ育って、自分が生きる道として音楽を始めたところですから、もちろん今でもとても大切な場所です。でも、最近はそれだけにこだわらないで、歌いに行くたくさんの街で知ったこと、学んだことを、新潟で得たことと同じように大事にして、別の街へ伝えて、僕の力でできる限りですけど、いろいろな街を結びつけていく。そういうことを意識して、歌を作ってライブで歌っています」

 

 と語るように、文字通り、全国をくまなく旅して歌っている落合さんにとって、ある意味で新潟は帰ってくる場所。その帰ってくるまでの道のりで、出会った人、新たに知った風土や歴史などが曲になることが、今では多いようです。

最新の2曲「アンタレスの叫び」「阿弖流為(アテルイ)と母礼(モレ)」も、そうした出会いから生まれました。

 「少し前に、北海道の小樽で、僕、生まれて初めて『流し』をやったんですよ(笑)。僕のライブを小樽で企画している人たちに助けてもらって、一応、訪ねるお店には事前に断りを入れていたんですが、お店のお客さんにとっては飛び入りで突然、何か歌うヤツが入ってくるという形で…。何軒かで歌っていって、あるお店に入ると、なぜか異様に盛り上がっているグループがいる。その人たちはもちろん、僕のことなんか知らない。たまたま僕の曲でアウトドアをテーマに書いた「Spotted Knife」を歌ったら、とても気に入ってもらえたんです。それで自己紹介しながら、聞いてみると、フリースタイルカヤックの高久瞳選手と彼女のサポートをやっているチームだというんです」

 

 フリースタイルカヤックは、カヌー競技の1種目で、スノーボードのハーフパイプで行われるフリースタイルと同じように、決められた場所で制限時間内にさまざまな技を駆使して多くのアクションを行い、審判の採点によって順位を競います。高久瞳さんは、この競技の世界選手権で総合優勝しました。現在も全国各地の渓流でトレーニングを続け、世界レベルの大会に出場しています。

 「高久さんたちと僕が出会ったのは、ちょうど小樽の近くでのトレーニングを終えて、その打ち上げをやっているときだったみたいなんです。そのトレーニングがうまくいったらしくて、それもあってか、すぐに打ち解けてもらえて、僕の方も自分の道を迷いなく突き進んでいる彼女の意志に一発で共感しました」

 

 高久さんと落合さんの交流は、その後も続き、落合さんがたまたま九州でライブを行ったときには、近くでトレーニングをやっていた高久さんを訪ねたこともあったそうです。

 

 「頼まれてもいないのに、自然に彼女のことを曲にして歌ってみたくなったんです。それでできたのが『アンタレスの叫び』でした。夏によく見える星座、さそり座の中心にある赤い星『アンタレス』の明るさが、彼女にはピッタリだと思って作ったんです」

 

 一方、「阿弖流為(アテルイ)と母礼(モレ)」は、平安時代に東北地方に存在した小さな勢力で、当時の大和朝廷と戦ったアテルイと、彼と行動をともにしたやはり現地の民衆のリーダーだったモレをテーマとした曲です。

 

 「この曲は、特定の誰かに会ったからというより、僕は歴史が好きなので、旅先で時間があると、古い神社を訪ねたり、古文書が見られるところに行ったりするんですよ。それで、岩手に行ったとき、アテルイとモレに興味を持ったんです。地元の人に聞いてみると、小学生でも自分たちの歴史として、アテルイとモレのことは普通に知っている。ただ、ほかの土地までは、そのことが伝わっていないだけなんですね。昔から人から人へ、親から子、子から孫へと伝えられてきたことだけど、その周辺から外へは広がっていかない。これを伝えるのは、僕の役目だろうと思って、この曲を作ることにしたんです」

 

 歌う旅で知ったこと、出会った人のことを曲にして、別のところへと伝えていく。こうした落合さんの現在の活動の在り方を具現化したのが、最新の2曲といえそうです。

 

加えて、この2曲は、通常のCDではなく、ちょっと変わった形態で届けられます。落合さんのホームページやライブ会場などで販売されている、燕市の金属加工の技術で磨かれたエチケットミラーにQRコードが刻印されていて、それを読み込めば、スマートフォンやタブレット端末、CDドライブのついていないパソコンなどで、25曲が聴けます。つまり、CDを再生する環境がなくても聴くことができるわけです。

 

 「ここ何年かで、音楽を聴く環境が大きく変わっていますから、音楽を発信する側も今までと同じ方法を続けているだけではいけないと、僕は考えているんです。今はもう、音楽を聴くといえば、スマートフォンで聴くのが普通のことですから、それに対応するために、こういう形で届けることにしました。でも、ただQRコードだけじゃ味気ないとも思ったので、エチケットミラーに音楽を添えるということを思いついたんですよ。やっぱり燕の金属磨きは世界にも誇れる技術ですから、新潟県にはこういう技があるんだよということも、新潟で生まれた僕としては、全国の人に知らせたいんです」

▲2019年10月27日に発売したカードミュージック。全25曲は二次元バーコードを読み込めば、スマホで聴くことができる。料金は3,000円。購入は落合さんのライブ会場または「サロン蓮子 」(080-4121-0811)へ問い合わせを。

 

最新の2曲と、それが聴けるエチケットミラーとともに、落合さんは間もなく、郷里の新潟へ帰還します。毎年恒例となっている年末のライブが今年は、12月21日(土)、新潟市の秋葉区文化会館で行われることになりました。

 

 「今は親が住んでいる、新津はまあ僕にとっては現在のホームですね。今までも年末はサポートのミュージシャンに手伝ってもらったり、いろいろな形でやってきましたけど、今年は飾りなく、弾き語りでやることにしました。それと新津を拠点に全国に自分たちの音楽を発信している2人組のユニット、Your Friendsが友情出演ということで登場してくれる予定です。当日は、落合みつをが今、何をやっているのか、しっかりお伝えしますから、会場までお出でいただけるよう、よろしくお願いします」

 

 

おちあい・みつを●新潟市を拠点に音楽活動を始め、2004年1月、「徒然/ダンシングオールナイト」2曲を表題としたシングルでメジャーデビュー。その後、自らのレーベルを設立し、05年12月にアルバム「カケラ」をリリース。自身の活動と並行して、ほかのアーティストへの楽曲提供、プロデュースなどを幅広く手掛けている。

 

 

落合みつを『ひとり、弾き語りの夜』

日時:12月21日(土)開場18時、開演18時30分、終演20時予定

開場:秋葉区文化会館大ホール

友情出演:Your Friends

チケット:前売4,000円、当日5,000円

チケット取り扱い:村さ来新津店(0250-24-8423)

HP:http://www.mitsuwo.com/PC/

 

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