新潟県長岡市出身のシンガーソングライター・琴音。10代とは思えないほどの豊かな表現力と高い歌唱力、凛としたたたずまいで人々を魅了し、オーディション番組やコンテストでグランプリを獲得するなど、数々の話題を集めてきました。そんな彼女が、2020年6月24日に記念すべきファーストアルバム「キョウソウカ」をリリース。高校時代の音楽活動を総括する、こん身の一枚ともいえる今作に込めた思いやエピソード、そして地元を離れ、新たな一歩を踏み出した自身の今後について、語ってもらいました。

自身初のラブソングに挑戦。高校時代の集大成にして、新ジャンルを開拓した意欲作

ファーストシングル「今」や、テレビ東京系ドラマ「ハル~総合商社の女~」のオープニングテーマにも抜てきされた「白く塗りつぶせ」、お茶の間に『琴音』の名を広く知らしめるきっかけとなったカバー曲「明日への手紙」。高校時代の歩みを凝縮した代表曲に加え、多彩な楽曲群が収録された今作「キョウソウカ」は、ファーストアルバムにして、琴音さんの新たな一面を感じさせる意欲作に仕上がりました。

「2020年のお正月に『多彩』という目標を立てました。今回のアルバムはその目標を意識しながら、さまざまなジャンルの音楽を収録することを目指して制作しました。今までやってこなかった挑戦をたくさんしてみようということで、初めてオリジナルのラブソングを作ったり、ラップ調の曲を作ったり、全編英語詞の曲を作ったりしてみました。また、タイトルの『キョウソウカ』は造語なのですが、聴いてくださった方それぞれの中に曲を取り込んでいただくきっかけになればと思い、あえて一つの意味を表す漢字ではなく、カタカナ表記にしました」

アルバム「キョウソウカ」を通して聴くと分かるのが、ラブソング中心の一枚だということ。大切な人との別れを思わせるような大人の一曲からポップな作風のもの、全編英詞でつづられたムーディーな楽曲まで、さまざまなテイストのラブソングでリスナーを楽しませてくれます。

「今までラブソングを作ったことがなかったので、今回が良い機会かと思い、挑戦してみました。初めての経験の中で不安がありましたし、制作した3曲のラブソングのうち、アルバムのリード曲でもある『咲かない花』は、作詞に挫折したりと精神的に苦しい部分もありました。残りの2曲(『The moon is beautiful』と『昨日より』)も無事完成して、新たなジャンルに一歩足を踏み入れることができ、とても充実した制作期間となりました」

収録曲すべてに、「思い入れがある」と話す琴音さんですが、中でも個人的に印象深い一曲が、表題曲の「キョウソウカ」だといいます。

「旦那さんを急病で亡くされた、知り合いの女性に向けて作った曲です。メジャーデビュー前からあった曲ですが、人の”生き死に”を売りものにして良いのかと悩み、ライブでも歌わずにしまい込んでいました。ですが、今回この曲を収録する提案を受け、家族などに相談したところ、『自分の旦那さんへの気持ちをいろんな人に向けて発信するのだから、奥さん自身も喜んでくれるはず』と後押しをしてくれたので、歌詞を一から書き直して収録することになりました」

中学時代からオリジナル曲を作り始めたという琴音さん。本アルバムに収録されている多くの楽曲で、琴音さん自身が作詞作曲の両方、もしくは作曲を行っています。曲作りの際に意識していることや大切にしている視点、自身のルーツになったものはあるのでしょうか?

「曲を作る時に意識することはどんどん変わっていますが、作曲を始めた当初から温かみのある曲をずっと作っているので、それがルーツといえばルーツかもしれません。今はそれに加えて、自分が興味を持ったジャンルの曲を作ってみたりと、ある意味実験的なこともしていると思います」