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怪談家・稲川淳二、73歳。新たな挑戦を続ける原動力は、ファンへの揺るぎない“想い”

全国各地に夏の訪れを告げる「MYSTERY NIGHT TOUR 稲川淳二の怪談ナイト」。「今年もあいつがやってくる」のキャッチフレーズとともに、怪談家・稲川淳二さんが全国に珠玉の怪談を届けてくれます。今回は、2020年の振り返りから、29年目の開催となる今年の見どころまで、興味深いお話をたくさん語っていただきました。

コロナ禍に負けず、ツアーを完走。稲川座長を支え続けたファンとの“つながり”

新型コロナウイルスの流行が人々の暮らしを一変させた2020年。もちろん「怪談ナイト」の開催にも、その影響は色濃く現れ、一部公演の中止や舞台美術の変更、客席配置など、さまざまな変化が求められました。しかし、そんなコロナ禍においても、稲川座長の強い決意のもと、見事全43公演を駆け抜けました。

「本当にみなさんのおかげですね。29年間も続けてこられたのは、昨年も無事にツアーを終えることができたのは、ファンの皆さんと一緒に作り上げているものだからです。客席のお客さんもみんな、マスクを着けているでしょう?いつもだったら、『座長おかえり。待ってました!』と声をかけてくれるけど、この状況下ではそうもいかない。でも、常連さんは大体同じような席に座ってくれているし、マスクをしていても、誰が来ているかわかるんです。声は出せないけど、身振り手振りや、視線で意思の疎通が取れる。公演が終わると、胸が熱くなるほどの力強い拍手で、『来年もここで待ってるよ』と伝えてくれる。『怪談は大騒ぎしなくたっていいんだ。私が語ってみんなが反応してくれて、いつもと同じじゃないか』と、逆に自信がつきましたね。コロナ禍で変わってしまった部分もあるけれど、それ以上に、お客さんとの“心のつながり”を強く感じられたツアーとなりました」

「怪談ナイト」のことを、「年に一度のお祭り」だと話す稲川さん。見知った人たちと再会できる、馴染みのステージに立った時、稲川さんはお客さんに「ただいま」と呼びかけ、お客さんもまた、稲川さんに「おかえり」と返すのだといいます。

「祭りってのは、みんながいるから出来上がるもの。私が神輿になったって、担いでくれるお客さんがいないと始まらないわけですよ。それでいうと、最高の祭りの舞台が新潟なんです。たとえば大阪なら、会場は大きいし、観客の数も多いし、毎年すごく盛り上げてくれるんですが、新潟はその勢いに決して負けてないんです。トップ中のトップともいえる盛り上がりで、5つ星ですよ、5つ星(笑)。全国どこも同じようなセットを使ってるけど、実はここだけの話、新潟だけちょっといい裏生地使ってるからね。ほかの会場は500万円くらいだけど、新潟だけは1800万円くらいの(ここでスタッフから『吹いてます』とツッコミが)。でも、本当にそれぐらい、新潟公演は楽しみにしているんですよ」

笑えて、泣けて、ゾクゾクして、“ツヤっぽい”!? かつてない魅力あふれる怪談が続々

“お祭り”も今年で29年目。怪談の第一人者として年々そのクオリティーに磨きをかけ、新境地を切り拓き続ける稲川さん本人も「今年は話が面白い」と自信をのぞかせます。

「今まで大事にしていた話があるんですが、今年はそれを披露します。芸能界の大先輩が古い新聞を送ってくれたことがあってね、この新聞には、若手の新聞記者が自分の実体験を基にして書いた、怪談話が連載されていたんです。いつか、これにまつわる話をしたいと取っておいたけど、今年は皆さんにお話ししないとと思って、披露することに決めました。昭和20年代の東京・本郷が舞台で、その時代のロマンを感じさせる怪談。妙に懐かしくて、何だかツヤっぽいんです。実はこれまでに、“ツヤっぽい怪談”はやってこなかったんですよ。笑えちゃうような、ちょっとエロい怪談はありますよ?(笑)この話は、10年前の私だったら出来なかったかな。8月に74歳の誕生日を迎えるんですが、74歳になる私だから、欲も色気もなくなって脂が抜けきっているから、逆に出来るのかなと思います。十数年苦労して、話の破片を集めて。『これはそうかな?』って、手探りで時間をかけながら、ようやく破片を集め終わったんです。それをご紹介できるので、私としても感慨深いですね」

稲川さんの新たな一面が垣間見える“ツヤっぽい怪談”のほかにも、クスっと笑える話やゾクゾクとした冷たさを感じられるもの、心温まるものなど、さまざまな切り口の怪談を用意。茨城にある工房にこもり、ただひたすらに作品づくりと向き合い続けた末に誕生した、珠玉の怪談が次々に飛び出します。

「皆さんが“稲川怪談”と呼んでくれる、怪談なのに優しくて、不思議と涙が出るような話、今年もありますよ。こういった話はいつも“語り”で進めていくんだけど、今年は“一人芝居”のようなシーンがあってね。せっかくなので、皆さんの頭のなかに景色が残るような、そんな話に出来たらなと思っています。それから、海に関する話。新潟の方が聞いたら、きっと日本海の風景が浮かんでくるんじゃないかな。あとは、面白いかどうかはまだわからないけど、自分にとっての挑戦となるような怪談がもう一つあります。放課後に友達同士で集まって、とりとめのない怪談をしているような、そんな雰囲気の話。私と友人・Yさんとの話なんですが、ただ聞いてるだけ、うなずいているだけで、お客さんがいつしかYさんになって、私の怪談の相手になっているんですよ。もう時間がないって言われたらやめれちゃうし、まだ時間があるなら続いちゃうの。とりとめのない怪談だから(笑)」

例年にも増して、さまざまな切り口、語り口で披露される今年の怪談は、自身にとっても挑戦の多い内容に。しかし、稲川さんは、プレッシャーを感じさせないような笑顔で、「私のお客さんはファン以上、サポーター以上。ダチどころか、マブダチですよ。だから、より素晴らしいもの、最高の怪談をお届けしたいんです」と話します。

「『今年はどうかなあ。来年はどうかなあ』と、常に先を見据えて、破片を集めている話がいくつもあります。どれがいつ、出来上がるかはわからない。今年もいい具合に出来上がったけど、毎年毎年闘いなんですよ。一口に怪談と言っても、それに付随する話、たとえば背景だったり、歴史だったり、民俗学や神話、科学、いろいろな文化があるわけで、そういったものがあって怪談があるんです。ただ怖いだけじゃつまらないし、本当じゃなくてはいけない。その場所へ行って、土地の空気を吸って、歴史を考えると、最高に気持ちいいじゃないですか。いろいろなところへ心霊探訪に出かけて、破片を集めて、怪談となるわけです」

“マブダチ”の新潟県民と共に、熱く盛り上がる「怪談ナイト」を!

近年は、生のステージのみならず、YouTubeチャンネルやニコニコチャンネルを開設し、ネット動画や生配信で怪談を披露するなど、活躍の場をオンラインにも広げています。

「私にとっては、『怪談ナイト』のツアーが財産であり、命なんですが、周りの人間が勝手にいろいろ動いていて、気づいたらYouTubeやニコニコチャンネルをやることが決まってたの(笑)。でも、ファンの皆さんが喜んでくれるならと思って、発信する形は違えど、ネットも生の舞台も同じ熱量で臨んでます。でも、やっぱり、怪談は生が一番ですよ。ジェットコースターじゃないけども、『誰かがキャーって叫んでるな』『怖がってる人いないかな?』って周りを見て、赤の他人が集まったはずのに、みんなで盛り上がって笑ってる。それが、怪談の醍醐味ですし、その空気を作ってるのはお客さんなんですよ。それに、映像で見る私って、何かダサいんだよね。おかしいなぁ(笑)。生のステージで話す私を見て、みんな驚くんですよ。『稲川さん、生で見るとすごいハンサムですよね』ってね!」

お客さんと心を通わせて、一緒に熱い空間を作り上げる怪談はまるでロックのようであり、新潟公演はまさしく、興奮と感動に満ちあふれた、ロックフェスの会場です。最後に、公演を心待ちにする新潟のファンへ向けて、稲川さんからメッセージをいただきました。

「新潟の皆さんは、私のマブダチです。今年も新潟に帰りますから、待っていてくださいね。会場で一緒に盛り上がりましょう。お会いできる日を楽しみにしています!」

イベント情報

イベント名 MYSTERY NIGHT TOUR 2021 稲川淳二の怪談ナイト
開催期間 2021年9月20日(月・祝)
開催時間 15時30分怪宴
会場 りゅーとぴあ・劇場
料金 5,800円(全席指定)
お問合せ先

FOB新潟 ☎025-229-5000

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