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「今の僕はこんな感じです」 シンガーソングライター・Caravanさんの“今”

 シンガーソングライターのCaravanさんは、ほぼ毎年、加茂市で開催される「Jin Rock Festival」に出演するなど、新潟とは長い間、深く確かにつながっています。この3月21日(水・祝)にも、自身のツアーでライブを行うために新潟市を訪れます。(終了しました)

 

「自分自身のツアーとして新潟に行くのは、5年ぶりになってしまいました。ですから新潟の皆さんには、『Jin Rock 』のときとは少し違った感じの僕の音楽で、いい時間を過ごしてもらえたらうれしいなと思っています」

 

 

 そう語る自身は昨年、すべての活動の基盤であり、自らほとんど全てを管理・運営する音楽オフィス「Harvest」を設立して10周年を迎えました。

 

「自分のオフィスを持つことにしたのは、『音楽を作るのに他者は介在させない』とか、『商業主義には立ち向かうぞ』とか、そんな構えた理由があったわけじゃないんですよ。単純に僕の音楽をCDで聴いてくれる人、ライブに来てくれる人たちの好みと、僕がやることが重なる部分をなるべく大きくしたかったからなんです。曲にしてもライブにしても、それに触れたとき素直にいいなと思える部分。色に例えるなら、僕の好みと重なったらまた別の色が生まれるような感じでしょうか。だから完全に重ならなくても、僕は構わないと思うんですよ。端っこ同士がちょっとだけ重なるだけでいい。そんなふうに少しずつ、だけど確かに気持ちが重なるように、これからも曲を作ってライブをやって僕の音楽を届けていきたいと思うんです」

 

 

 「少しずつでも確かに、自分の音楽を続けたい」。この思いから、最新アルバム「THE HARVEST TIME」は、一般的なCDショップや大手のインターネットショッピングサイトではなく、いくつかの書店や雑貨店、そして直に知り合いのカフェ、セレクトショップのほか、自身のホームページとライブ会場だけで販売されています。インターネットでの配信によるリリースも考えていないそうです。

 

「これも、特別な意図があるからじゃないんですよ。例えば、よく知っているカフェでCDを売ってもらっています。これは僕が好きなそのお店のハンバーガーを、同じように好きな人は僕の音楽も気に入ってくれるかも、という期待があるからなんです。お互いの感性がちょっとでも重なる可能性を信じているだけのとても単純で具体的な思いつきから始めたことなんですよ。ちょっとしたことですけど、しっかり感覚として共有できる。それを音楽を作る上でも、届けるプロセスでも大切にしたいんです」

 

「色彩を感じられる最新作を発売した理由」(次のページへ)

 大切にしたいことが気持ちの根っこにあるからでしょう。アルバムは、聴いてくれる人と感覚を共有したいという思いに満ちています。このアルバムを、3人のミュージシャンが少しの音を重ねた以外、彼はすべての楽器を自ら演奏し、コンピューターも活用するとともに、録音作業も自ら手掛けて完成させました。

 

「自分が何を聴かせたいのか、どんな感触の音で聴いてほしいのか、その意図を矛盾なくアルバム全体に反映させたかったんです。だから、できる限りのことを自分でやってみることにしたんですよ。もともと、いろいろな楽器に触れるのは好きだし、コンピューターでリズムを打ち込んだり、レコーディングの技術的なことでも音を調整するとか、どれも楽しんでやれる方なので、大変だと感じることはなかったですね」

 

 

 ほぼすべてを1人でやって完成させたと言っても、実際にアルバムを聴いて、閉じこもった印象を受けることはありません。全体の感じは、むしろ明るく開放的で、彼の個人的な世界へ招き入れてくれるような曲ばかりが聴けます。

 

「それは聴いてくれる人のことを、これまで以上に意識して作ったアルバムだからだと思います。といっても、聴く人が求めていることを先回りして形にするとか、求めているだろうと僕が思えることに自分をまげてすり寄るんじゃなくて、今、僕がいいと思える、音楽を通じて伝えたいこと、伝えるべきだと考えていることを信じて、それを素直に、飾らないで歌詞やメロディーにしていく。そのことで聴いてくれる人に共感してもらえたらと思って、アルバムを作っていったんです」

 

 自分が今、どんなことを感じ、何を曲にしていきたいのか。そのもとになる自身の感覚や感性を信じて、そこから生まれる音楽で、聴いてくれる人たちと思いを共有したかったといいます。

 

「感覚を共有したいという部分では、たくさんの楽器を使う中で、聴いた人に色彩をイメージしてもらえるような音色のものを選んでいきました。その音を聴いたときに、何となくですけど、色を感じてもらえるような楽器をいろいろ使っています。響きを生かすことで、曲調も自然に決まっていったということもありました」

 

Caravan / Retro【MUSIC VIDEO】

 

 その言葉通り、アルバム「THE HARVEST TIME」はまさにカラフル。曲ごとに、さまざまな色調を感じさせながら、全体を通じて鮮やかで明るく響き、自身のオフィス「Harvest」を設立して10周年を記念した作品にふさわしい内容になっています。

 

「このやり方で10年間活動を続けてきた今、僕に何ができるのか。やるべきことは何なにか。ずっと僕の音楽を好きでいてくれた人、そしてこのアルバムで初めて出会う人たちにも伝えたいと思ったんです。ただそれは義務とか責任とか、そういう堅苦しいことじゃなくて、現状報告というか『今の僕はこんな感じです』ということを、新しい曲を聴いて気楽に知ってもらえたらと思って作ったんです。以前と変わらない部分もあるだろうし、今までとは違う感じがあるかもしれません。もちろん今という時代を暮らしながら僕が感じたことから生まれた曲もあります。でもアルバムから何を受け取るのかは、聴いてくれる人の自由ですから、それぞれに何かを感じ取って楽しんでもらえたら、僕としては何よりうれしいです」

 

「3/21の新潟ライブの会場は、能楽堂」(次のページへ)

 アルバムを聴く人と自身の間で確かに共有できて、さまざまなことを自由に感じ取れる音楽。それを生み出してきたことが、この10年間で彼が残してきた最も大きな成果といれるかもしれません。「成果」ということから想像を広げれば、アルバムの表題、そしてオフィスの名前にも、英語で「実り」や「収穫」を意味する「Harvest」という言葉が使われていることも、どこかで彼の思いがつながっているようにも思えてきます。

 

「僕としても『実り』『収穫』という言葉は、以前から、そしてこれからも大切にしたい言葉なんですよ。どちらも、種まきから始まる長くていろいろなプロセスがあって、初めて手にできる成果ですけど、そのサイクルは次の年も同じように続いていきますよね。しかも実りで収穫した成果は、それを一緒に育んできた人たちみんなで分け合えるというところも、僕は好きなんです。だからそんなふうに僕の音楽も、1人でも多くの人たちと、そのときだけじゃなくて、続いていく時間の中で育てて、それで何かが生まれたら、みんなで分け合えたら素敵だなと思うんです」

 

Caravan / Bohemian Blues【LIVE VIDEO】

 

 多くの人たちと音楽を分け合う。そのことをアルバム以上に、確かに体感できるのがライブでしょう。3月21日(水・祝)、彼がライブを行う新潟市民芸術会館りゅーとぴあ能楽堂は、ほかにも増して、それを体験するのにふさわしい場所といえそうです。

 

「新潟にライブができる場所として面白いところがあると勧めてくれた人がいて、今度は能楽堂でやってみることにしたんです。僕の音楽を楽しみにきてくれる皆さんにとっては新鮮な感じだと思いますし、本当は能や狂言を上演するところですから、そういう伝統で受け継がれてきた精神的なパワー、『気』が集まっている空間だと僕は感じているんです。その力も借りて、僕の音楽で何が生み出せるか。自分でも期待しているんですよ。そのとき、そこだけで生まれることを、会場の皆さんと共有して、お互いの気持ちをより深く、分かり合えるライブにしようと思います」

 

 

◆ライブ概要(終了しました)
Caravan “The Harvest Time” TOUR 2018
【日時】3月21日(水・祝)18時  【会場】りゅーとぴあ 能楽堂 

【料金】4,000円(全席指定) 【Lコード】73708 【Pコード】102-993  

【チケット】発売中 【備考】3歳以上有料  
【問い合わせ】FOB新潟 ☎025-229-5000

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