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【水と土の芸術祭2018関連企画】新潟の港を舞台にNoism2が舞い踊る

 国内唯一の公共劇場専属舞踊団としてりゅーとぴあを拠点に活動。舞踊家たちによる研ぎ澄まされた身体表現で描く作品が世界的に高く評価されているNoism。その研修生カンパニー・Noism2による「Noism2 特別公演2018」が7月28日(土)・29日(日)に万代島多目的広場で上演されます。

 

 Noismの夏の恒例企画となっている「Noism2 特別公演」は、毎回りゅーとぴあを飛び出し、新潟市内の公園や廃校のグラウンド、国の重要文化財に指定されている洋館など、さまざまな場所を舞台に開催されてきました。

 

『RAFT』(2014 年) 演出振付:山田勇気 Photo:Isamu Murai

『赤降る校庭 さらにもう一度 火の花 散れ』(2015 年)演出振付:山田勇気 Photo:Isamu Murai

『よるのち』(2017 年) 演出振付:平原慎太郎 Photo:Isamu Murai

 

 6回目となる今回の舞台は新潟市中央区の「万代島多目的広場」。現在開催されている「水と土の芸術祭 2018」の関連企画として、アート作品が展示されているこの場所で、パフォーマンスを繰り広げます。

 

松井紫朗《Soft Circuit》(水と土の芸術祭2018) Photo:Osamu Nakamura

 

 

 今回上演されるのは、元Noism1のメンバーで、現在はDance Company Lastaを立ち上げ、東京を拠点に活動している振付家の櫛田祥光(くしだ・よしみつ)さんによる新作『ゾーン』。

 

 本番が迫る7月某日、りゅーとぴあで行われているリハーサルにお邪魔してきました。

 

 

踊ることで「忘却」に抵抗したい

 

 

 通し稽古の前に振付家・櫛田さんが「100年後を想像して」と一言。

 どこかノスタルジックな雰囲気が漂う、ゆったりとした音楽が流れ始めると、舞踊家たちがしなやかに身体を動かします。

 

 

 フォーメーションを多彩に変えながら、全身をダイナミックかつ繊細に使って、悲しみやさみしさといった感情を表す8人の舞踊家。そして、その間を浮遊するように憂いを帯びた表情でゆっくりと歩く1人の舞踊家。彼女たちによって描き出される美しくも切ないコントラストに、胸が締め付けられます。

 

 すうっと芯の通った美しい立ち姿、なめらかに動く鍛え抜かれた身体。吸い込まれるように見とれていると、まるで時間の流れが違う異空間にいるような気分に。思わずうっとりとしてしまいました。

 

 

 私は舞台の周りを移動し、さまざまな角度から撮影をしながら見ていたのですが、広い会場を想定した奥行きのある作品なので、どこから見ても魅力を堪能できる構成になっていると感じました。全部で4公演あり自由席なので、複数公演のチケットをゲットして、回によって座る位置を変えて何度も楽しむのもおすすめです。

 

 リハーサルを見せていただいた後、振付家・櫛田さんにお話を伺いました。

 

「ここでしかできない方法で作りたい」

 

 

 櫛田さんは2007年から12年までNoismに所属し、舞踊家として活躍していました。そのNoismに振付家として戻ってくることは思ってもみなかったと言います。

 

櫛田「Noismにこういう形で戻ってこられるとは思っていなかったので、オファーをいただけたことはうれしかったですね。本番が近づくにつれて不安もありますが、彼女たちの魅力を引き出せられるように頑張りたいと思います」

 

 

 今回上演される新作『ゾーン』は、「忘れることや、忘れられること」などがテーマになっています。

 

櫛田「今作では、忘れてしまった人と忘れられた人々やことを描いています。東日本大震災や西日本の豪雨など、いろいろな出来事がありますが、それらを忘れてしまう、風化させてしまうことの恐怖やさみしさがテーマになっているんです。作品を創るときには、僕は社会との関わりを考えていて、自分が何かすることによって、社会がよい方向に動いたらいいなと思っているので、時事性を持たせることは自分のカンパニーでも大切にしているんです。自分のエゴでもあるんですが(笑)、好きなものを創るだけでなく、作品を通して社会に関わっていたい。自分のカンパニーでもNoismでも、レパートリーや作品は言葉や映像で受け継がれていくものなので、自分がいなくなった後も、風化させずに残っていってほしいという思いを込めて、作品創りをしています」

 

 

 今作は「ここでしかできない方法で作りたい」という思いのもと、舞踊にすべてを注ぎ込んでいるNoism2のメンバーと共にじっくりと時間をかけて作品を創り上げたそうです。

 

櫛田「バイトなど舞踊以外のことにも多くの時間を取られてしまうフリーのダンサーとは異なり、Noismのメンバーは新潟に移住してきて、NoismメソッドやNoismバレエという訓練を毎日実践し、舞踊に向き合っているので、舞踊に対する覚悟が違うと思いますね。今回は僕が振付けたものをやってもらうだけでなく、彼女たちと話したり、実際に体を動かしたりしながら、クリエーションを進めてきました。約1カ月間向き合ってきて、彼女たちは高い技術を持っていると実感しています。まだまだ良いものに仕上げていきますので、当日は最後まで目を離さずに楽しんでいただけたらと思います」

 

 Noism2には、現在、プロを目指して全国から集まった9名の舞踊家が在籍。2017年8月からスタートした今シーズンは7月いっぱいで終了になるため、今回の公演は現メンバーにとって1年間の集大成となります。

 

 屋外公演ということで、潮風が感じられる万代島多目的広場を舞台に、舞踊とアート作品の融合が楽しめるのは今回だけ!しっかりと暑さ予防をして、Noism2の公演を堪能してみてはいかがでしょうか?

 

 

 

櫛田祥光(くしだ・よしみつ)/ダンサー、振付家。2007~12年Noismに所属。13年Dance company Lastaを創立。以降14作品を発表し、15年New Prague Dance Festival 2015 International Dance Festival-Competitionコレオグラフィー部門最優秀賞受賞。第49回埼玉全国舞踊コンクール創作舞踊部門第1位、他受賞歴多数。

 

 

Noism2

りゅーとぴあ専属舞踊団Noism(芸術監督:金森穣)の研修生カンパニー。プロフェッショナルカンパニーであるNoism1の付属集団として09年9月設立。プロをめざす若手の舞踊家が所属し、毎年単独公演を行うほか、Noism1との合同公演として劇的舞踊「ホフマン物語」、「カルメン」、「ラ・バヤデール―幻の国」や「中国の不思議な役人」に出演。13年のシーズンからは山田勇気がリハーサル監督に就任し、新潟市内で開催されるイベント等へのゲスト出演や中学校への出前公演など、新潟に根付いた活動を展開している。

 

 

◆公演情報

Noism2 特別公演 2018『ゾーン』 

7.28(土)・29(日)開催 

会場/万代島多目的広場(屋外広場) 

時間/各日(1)15時30分 (2)17時30分 

料金/1,500円(整理番号付き・自由席) チケット発売中 

備考/未就学児入場不可 

お問い合わせ/りゅーとぴあチケット専用ダイヤル(11時~19時、休館日を除く) 

℡/025-224-5521 

 

演出振付/櫛田祥光 出演/Noism2

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