サイトアイコン Komachi MAG.

新潟ゆかりのアーティストが一堂に集結。エンジニア・井上一郎が描くビジョンとは!?

 新潟に拠点を置いて活動を続けているミュージシャンなど、新潟にゆかりのある音楽関係者が50人あまりも集まって制作した曲がCDとして発売されました。曲名は、「Yes I Do」。その制作の中心となり、リリースまで尽力したのは、井上一郎さんです。

 

 

「去年で、僕がレコーディングエンジニア(録音技師)の仕事を始めて30年になりました。だから区切りに、何か音楽として残るものを作ろうと思ったんですよ。ならば自分の記念のためだけじゃなく、大勢の人たちと共有できるものにしたくて、今まで新潟で一緒にレコーディングしてきた人とやってみることにしたんです」 

 

 井上さんは、新潟市出身。高校卒業後、1987年に東京のレコーディングスタジオに入り、最初はアシスタントエンジニアとして、後に正式なエンジニアとなって、生前の尾崎豊をはじめ、松任谷由実、氷室京介、吉川晃司、THE YELLOW MONKEYといった多くのアーティストのレコーディングを手掛けてきました。2003年に新潟へ戻って、自身のレコーディングスタジオを開設。05年には、新潟産業創造機構「にいがたニューエジソン」として認定を受け、翌年にスタジオの事業を株式会社化し、現在はエンジニアであると同時に「株式会社エヌトライブ」の代表取締役でもあります。新潟のスタジオではこれまで、NegiccoやRafvery、YOUR FRIENDS、RYUTistなどのレコーディングをエンジニアとして支えてきました。

 

 

 

 「東京で仕事をしていたころ、氷室京介さんや吉川晃司さんの曲の作詞をされていた松井五郎さんとレコーディングの現場でご一緒することがよくあって、とてもかわいがっていただいたんです。僕が新潟へ戻ることを勧めてくださったのも、松井さんなんです。

 

 戻るのを決めたのは、ちょうどMONGOL800が沖縄に活動の拠点を置いたまま、全国から大きな注目を集めていた時期。『彼らのように東京にいなくても自分の音楽を広く日本中に、いや世界にだって発信できる時代になった。同じように、新潟でもできるんじゃないか。郷里を愛しているなら、それにチャレンジする価値はきっとある』と松井さんに言っていただいて、気持ちは固まりました。背中を押してもらった気がしたんです」

 

「『Yes I Do』の作詞は恩人・松井五郎さんに」(次のページへ)

 新潟に戻ってからも敬愛し続け、強く厚い関係を保ってきた松井さんに、今回の曲「Yes I Do」の作詞をお願いすることになりました。

 

「こういう意図でこういう曲を作りたいとお話しすると、すぐに快諾してくださいました。それに、松井さんも新潟に全く縁がないというわけじゃないんですよ。ずっと前から全国各地で音楽を教える仕事もされていたので、そのために新潟にもよくいらしていたんです。だから土地としても、そこで暮らす人たちに対してもご自身の中にイメージをお持ちだったようです。そのイメージをもとに、歌詞を書いていただきました」

 

 

 新潟のイメージを内包しながら、同時にどこであろうと郷里を愛しているなら多くの人が自然に共感できそうな、普遍性を持った歌詞が完成しました。その歌詞が歌われる曲をどうするか。それについて、こちらは井上さんに、あるイメージがありました。

 

「作ることを決めたときから、『ウィ・アー・ザ・ワールド』のような曲にしたいと思っていたんです」 

 

 イメージのもとになった「ウィ・アー・ザ・ワールド」は、1985年に当時のアフリカの飢餓と貧困から多くの人を救おうと作られたチャリティーソングです。80年代に世界のスーパースターとなっていた、故マイケル・ジャクソンが中心となって、現在も東日本大震災からの復興に尽力するなど、チャリティー活動に積極的なシンディー・ローパーをはじめ、ビリー・ジョエルやブルース・スプリングスティーンら、人種とジャンルの壁を超えて、数多くのアーティストが参加し、「USA フォー・アフリカ」という名義で発表しました。

 

「まだ上京する前、新潟でこの曲を初めて聴いて、テレビで映像も見て、本当に感動しました。僕の音楽的な原点になった曲といっていいかもしれません」

 

 

 

 善意と共感、そして希望を伝える曲という意味では、「Yes I Do」と「ウィ・アー・ザ・ワールド」は、どこかで通じているといえるでしょう。壮大で、でも聴いているとなぜか心を軽くして、明るい気持ちになれる。そんな「YES I DO」のメロディーは、Negiccoの作曲やプロデュースを手掛けてきたconnieさんが作りました。

 

「僕にイメージがしっかりあったので、思った通りの曲にしてもらえたと思います」

 

「新潟人との制作、そしてライブへ」(次のページへ)

 イメージを共有できていたのは、作曲者とだけではなく、この曲を歌ったアーティストたち、演奏に参加したミュージシャンたちも同じだったようです。それらの人たちが共に心に抱いていたのは、新潟を愛する気持ち、さらには井上さんも含め、新潟でそれぞれ活動を重ねてきたことへの誇りではないでしょうか。

 

「曲作りに始まって、CDとして完成するまで、参加してくれたすべての人たちの気持ちが1つになったと感じました。歌に関しては特に、男性と女性、しかも大勢の人たちが一緒に歌うので、音域とタイミングを合わせることをはじめ、音楽的には難しい部分もあったんですが、皆さんの意欲がそれも乗り越えさせてくれました。自信を持って、聴いてもらえる曲にできたと思っています」

 

 

 

 CDとしてのリリースとともに、「Yes I Do」をライブで楽しめるイベントも7月22日(日)に新潟市で行われます。

 

「当日はレコーディングに参加してくれた人たちに、ほぼ全員、出演してもらえると思います。それと合わせて、新潟のおいしいものを会場で楽しんでいただけるように準備しています。会場にいらっしゃる皆さんには、音楽と食を同じように、その場で体験してもらえたらうれしいですね」

 

 

 

 イベントが実現することで、井上さんが目指してきたことが多くの人たちと共有できる形で具体化するといえそうです。

 

「僕は、新潟の音楽を活性化して新潟で生まれた音楽をいつまでも存在させることを目指して、スタジオの仕事を続けてきました。この土地で自分で何かを作り出す、あるいは作り出す手助けをするという意味では、今度のイベントの会場でおいしいものを提供してくださる皆さんと気持ちは同じだと思います。そして音楽も、食に関しても、新潟でこういうものが生み出されている。そのことを楽しむと同時に、1人でも多くの新潟で普通に暮らす人たちに誇りに感じてもらえたら……。そのきっかけに『Yes I Do』という曲がなってくれることを、今は願っています」

 

 

◆ライブ概要
音楽でかさなる新潟の祭典『Yes I Do Niigata Music Festival』
【日時】7月22日(日)11時~16時 【会場】万代シテイパーク 2F
【料金】入場無料 

【問い合わせ】エヌトライブYes I Do 実行委員会 【TEL】025-285-7307
【出演】岩船ひろき/ピータンくみこ (The Mandums)/落合みつを/鎌倉克行 (so nice)/

斉藤瞳/JILL (PERSONZ)/SWAMP/タカハシナオト/舘恭介 (Trad Soul)/TSUNEI

/ナタリー石田 (The Mandums)/音呂/葉月みなみ/Rafvery/

RYUTist/Your Friends/YUKI (Snow Drop)

 

モバイルバージョンを終了