バンドを取り巻く環境が変わったことに伴い、メンバーたちが気持ちを新たにして作り上げたアルバムで、彼らはこれまで以上に躍動的な音楽を基調にして、バンド形態のシンプルな音の構成にのせて、スムーズなメロディーが歌われています。大まかな印象は、これまでのBRADIOの曲と変わりませんが、その根幹の部分、特にリズムの基盤の部分がたくましさを増し、曲そのもののエネルギーをしっかりと感じさせます。

 

 

酒井さん「レコーディングでは、各曲で自分がどんな演奏をしたらいいのか、事前にかなり緻密に考えるんです。その意味ではこれまでと同じなんですが、今度のアルバムで違っていたのは、曲に備わっている躍動感に自分を委ねられたということです。もちろん先に考えた意識的な演奏を最初はやっているんです。でも自分が曲に入り込んでいくに従って意識していたことが無意識に変わっていく。いろいろなことにとらわれなくなって、演奏しながら無心になれた気がします。何か自分が想定していた以上の結果をレコーディングの成果として残せたと思います」

 

大山さん「僕も、これまでのレコーディングではクリック(電子的に一定した間隔で発せられる信号音を演奏者に聞かせ、テンポを保たせる、コンピューターによるメトロノームのようなもの)を使っていたんですが、今回は途中からやめました。その方が曲と自分が直にリンクできると思ったからです。だから曲に向き合ったとき、自分の中から自然に生まれてくるテンポ感、速さの感じをそのまま、演奏に生かすことができました」

 

 メンバーたちが音楽に対して直接的に向き合って、その中に入り込んで自分たちの体の感覚で生み出した躍動感を、聴く人たちも体で感じ取れる。そのことが新たなアルバムでは一貫しています。この身体性を自分たちの音楽にしっかりと獲得したことが、BRADIOの確かな進化といっていいかもしれません。

 

大山さん「僕らはアメリカのR&Bをはじめ、海外のいろいろな音楽から影響を受けてこのバンドを始めました。そうしたずっと前から自分たちが好きで、聴き続けてきた曲から感じてきた音楽の生命力や躍動感にとても近いことを、今度のアルバムを作っていく中で自分たちで作った曲からも感じられた気がしたんです。その躍動感みたいなものをそのまま、皆さんにいいと思ってもらえるかどうか、それは今のところはっきりとはわかりません。でも僕らはこれからこのアルバムを足がかりに、その音楽の素晴らしさや、僕らがいいと感じる音楽が本質的に備えている生命力と躍動感を、バンドとして発信していこうと考えているんです」

 

 

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