今回のパン特集では、パン好きな人なら名前を聞いただけでピンとくる”あの人”が新潟Komachiに初登場!
パンライター・池田浩明さんです。
<池田浩明さんプロフィール>
パン好きが集まる”パンの研究所”「パンラボ」主宰、NPO法人新麦コレクション理事長。全国のパンを食べ歩き、パンをテーマにさまざまなメディアで活躍中。「食パンをもっとおいしくする99の魔法」(ガイドワークス刊)、「日本全国パンの聖地を旅する パン欲」(世界文化社刊)など著書も多数。
今回池田さんは、新潟のベーカリーを編集部と一緒にめぐって徹底取材。2日間にわたる取材中、池田さんは立ち寄ったお店でとにかくパンを食べる、食べる、食べる…!パン屋さんを見つけると目が輝く様子は、まさにブレッドギーク=パンオタクそのものでした。
取材風景と合わせて、パンめぐりの様子を少しだけご紹介します。
■池田さんもビックリ!自家培養酵母の魔術師「みなと街ベーカリー」
「自家培養で作ったことが信じられない端正さ。これは日本のベーカリーの最新形だ!」(池田さん)
ショーケースに並ぶパンを見て池田さんも驚いたのが、新潟市中央区にある「みなと街ベーカリー」。食事パン、ハードパン、コッペパン、食事パン…。小さなお店ながら、多彩なパンがずらりと並びます。
実はこちらのパン、すべて自家培養発酵種(天然酵母)で作っているんです。池田さんによると、ふわふわした食感のコッペパンや食事パンを自家培養で作るのが一番難しいんだとか。
看板パン「キタノカオリ山型食パン」も、香ばしくパリパリに焼き上がったクラストともちもちのクラムが絶妙な逸品。バラエティー豊かなパンを生み出す店主・高井淳志さんの華麗な技のとりこになったお客さんで、開店直後からお店は大忙しです。
■みなと街ベーカリー
[住所]新潟市中央区赤坂町2-3188-12
[TEL]025-378-3643
[営業時間]9時~17時
[定休日]水・木曜
■トングを持つ手が迷う!自慢のデニッシュ食パンに思わず目移り
「バターがむんむん香って、ふわりエアリーで、中からチョコやメープルがとろける…食パンの棚に、いきなり大興奮!」(池田さん)
コロンとかわいい食パン棚が目を引くこちらは、新潟市西区にある「ちいさなパン家 Cachette」。看板のデニッシュ食パンは、メープルくるみ、シナモンアップル、いちじくクルミ…など、日替わりで10種類以上が並べられています。
もちろん食事パンもいろいろ。京都で修業をしていたというシェフのタカオコマツさんが作るのは、本物の素材を使った、親しみやすくてかわいらしいパン。個性あふれるパンが、所狭しと並んでいます。
池田さんの取材にも熱が入り、ここでもパンをお買い上げ。地元の人たちに愛される小さなお店・カシェットの優しい味のパンにすっかり魅せられた様子でした。
■ちいさなパン家 Cachette
[住所]新潟市西区新通南3-5-17
[TEL]025-260-5963
[営業時間]8時~17時※パンがなくなり次第終了
[定休日]木曜、第2・4月曜
■手間をかけた分、味わい深い。「パン・ド・メルソー」佐々木シェフのパン
「佐々木シェフは、パン作りが大好きな人。パン作りの話が面白くて尽きない!」(池田さん)
続いて池田さんと訪れたのは、新潟市中央区「パン・ド・メルソー」。住宅街の角に佇む小さなパン屋さんです。
こちらで腕をふるう佐々木尚シェフは、パン作りへの情熱にあふれる方。「糖尿病を患ったお客さんのために、低糖質の素材・ゴマペーストを入れたパン「雑穀とフルーツ」を生み出すなど、たった1人のためにさえ仕事をする姿勢に驚きです」と池田さん。その人柄が、丁寧に作られたパンから伝わってくるようです。
厨房の一角で、パントークに華を咲かせる池田さんと佐々木シェフ。
取材が終わると、佐々木シェフが愛読しているという池田さんの著書に本人からサイン。これには佐々木さんも思わず満面の笑顔!
優しさとこだわりが詰まったパン・ド・メルソーのパンに、すっかり魅せられた池田さんでした。
■パン・ド・メルソー
[住所]新潟市中央区京王2-12-16 アップルプラザ
[TEL]025-287-7117
[営業時間]8時~19時(日曜・祝日は18時まで)
[定休日]火曜、ほか不定休あり
■本物を追求する、最先端のベーカリー「Harmonie Washima Boulanger」
続いて訪れたのは、廃校となった小学校に創られたベーカリー「Harmonie Washima Boulanger」(アルモニエ ワシマ ブーランジェ)。
「実は以前、一度来たことがあるんです。もう一度来てお話を聞きたいと思っていました」と池田さん。何しろこちら、そのハイセンスな雰囲気だけでなく、パン作りで地域を活性化する取り組みを行っているんです。
「ここでパンを作るのは、障がいを持つ人たち。かといって、美しい形、味は第一線級のべーカリーに引けを取りません」と池田さん。そこには、本物を徹底的に追求することにこだわる支配人・斎藤篤さんの思いが込められていました。
斎藤さんとのお話にも熱が入ります。廃校を生まれ変わらせただけでなく、そこで地域を元気にする取り組みも行う、全国的にも珍しいベーカリーです。
■Harmonie Washima Boulanger
[住所]長岡市和島中沢乙64-1 和島トゥー・ル・モンド内
[TEL]0258-84-7429
[営業時間]10時~17時
[定休日]水・木・第1日曜
■社長と職人たちの情熱が生み出す、「サン・フォーレット」のアイデアパン
最後に池田さんと訪れたのは、三条市北入蔵のベーカリー「サン・フォーレット」。
親しみやすさあふれるパンが店内に並ぶ、郊外型のパン屋さん…かと思いきや「市内の農家に頼んで小麦を自家栽培したり、スペシャルティコーヒーを磯辺隆社長自らが自家焙煎したり…パンの斬新さや深堀り度合いが、そんじょそこらとは全く違う!」と池田さん。
社長の磯辺隆さんは、さまざまなことにチャレンジし続ける情熱あふれる人。店内には三条産小麦で作ったパンが並び、「あいすパン」などのアイデアパンも豊富です。さらに、ライ麦パン教室も行っているというから驚き。
日々挑戦し続ける社長の姿勢が、街のみんなに愛される秘訣なのかもしれません。
■手作りパンの店 サン・フォーレット
[住所]三条市北入蔵2-18-25
[TEL]0256-38-4100
[営業時間]7時~19時
[定休日]火曜※月1回連休あり
■池田浩明さんインタビュー「ベーカリーめぐりをもっと楽しむヒント」
5軒のパン屋さんをめぐり、情熱的で真摯に仕事に向き合う職人たちを取材した池田さん。最後に、新潟のパン屋さんをめぐった感想を聞きました。
―新潟のパンの特徴は何か感じましたか?
「新潟はお米の県ですから、モチモチとした食感がみなさん好きなのかも。加水率の高い、しっとりした生地のパンが好まれているように感じました。パンは日常食ですからね。水分をたっぷり含んだ、流れるようになめらかな生地は見ただけで質感が分かります」。
―池田さんがパンに目覚めたきっかけは何ですか?
「就職した会社を辞め、フランスに住んでいた時期があったんですが、パン屋さんがあるとついチェックしてしまって、なかなか前に進めませんでした(笑)。そうしたらだんだんと、パン屋さんの匂いで好みかどうか分かるようになってきたんです。そこで、自分はパンが好きなんだな…と自覚しました。自然な素材を使っているお店の方が、いい匂いがするんですよ」
―池田さんがお店をめぐる時、心掛けていることは何ですか?
「僕はお店に入ったらまず、店内を何周もしてラインアップを見るんです。そして、そのお店にしかない、個性がある…言ってしまえば『ネタになる』ようなパンを探します。パンが放つ魅力を感じるイメージですね。あとは「ブーランジェリー」だったらバゲット、「ベーカリー」だったら食事パンに注目したりもします。職人が何を考え、どんなパンを目指しているのかを店名から読み取るんです。また、5,6個並んでいるパンの形がすべて同じだったら『あっ、丁寧な仕事をしている店だな』とか。目で見ただけで、さまざまな情報が入ってきますよ」
―池田さんがパンの取材を通して一番伝えたいことは何ですか。
「作り手へのリスペクトに尽きます。人間活動に必要不可欠な『食べ物』を作るというのは、とても尊い仕事。パンは安くて庶民的、誰でも参加できる娯楽なのに、一つ一つが手作りである意味アートともいえるもの。職人の言いたいこと、頑張っていることを、代弁するような気持ちで取材をしていますし、見た方に少しでも伝われば嬉しいですね」
新潟Komachiのパン特集「おいしいパンめぐり」では、池田さんの取材・文章で、注目ベーカリーをたっぷりとご紹介しています。
まるで一緒にパンめぐりをしているような写真と、池田さんの軽快な文章で、パン屋さんの魅力を再発見してみてください。