1月25日発売の新潟Komachi3月号「カラダにおいしい発酵の秘密」では、日夜、目に見えない発酵の力と向き合う職人たち5名にインタビュー。自慢の味を生む微生物の力と、どう向き合っているのか。話を聞いてみると、職人ならではの面白いエピソードがたくさんありました。

 

今回、KomachiMAGでは5人の職人のうち「しょうゆ職人」と「みそ職人」の2人をピックアップしてご紹介します。

 


 

ひとり目の職人さんは「しょうゆ職人」としてご登場いただく、野澤食品工業の野澤陽祐さんです。毎日、こまめに発酵の具合をチェックし、時より混ぜて空気を含ませ、菌を活性化する必要があるそうです。そのさじ加減は職人の勘!

 

 

木桶と丸大豆で奥深くマイルドに

創業180年。工場が国の有形文化財にも登録されている野澤食品工業の始まりは江戸時代です。村上藩の蔵屋敷や北前船の船宿、造り酒屋と、業態を変えながら栄えてきました。しょうゆとみその製造業を立ち上げたのは第二次世界大戦後のこと。野澤陽祐さんの祖父が一代目の造り手になり、陽祐さんで三代目です。しょうゆが特に評判で、村上市の飲食店でも使われるほどです。

もろみから搾ったばかりの生じょうゆ。ほんのり赤みがかった色は、鮮度が高い証拠だそう。芳醇ながらツンとこない、上品な香りが鼻をくすぐります。

 

 

昔ながらの製法に、新しいものを加えながら

「祖父から受け継いだ木桶を使った製法を守りつつ、素材などを変えながら進化させています。味のベースになる大豆は、約20年前から丸大豆にしました。丸大豆は油分を多く含みますから、まろやかな口当たりに仕上がります。発酵が遅いという欠点があるのですが、二代目の父が採用した珍しいこうじ菌があり、これが解決してくれました。質のいいこうじ菌を使うと、早く発酵します。昔から木桶に住み着いている菌との相性も良くて、上手く発酵が進むんです。さまざまな菌の働きで、奥行きのある味わいが生まれるんです」。

しょうゆの元になるこうじは、上質な丸大豆に厳選したこうじ菌、自家焙煎の小麦と、素材へのこだわりも深い。

 

 

最良の大豆を最良の発酵具合で

伝統と革新を組み合わせた、野澤食品工業のしょうゆ造り。「おいしいしょうゆはふた夏越えて出来上がり。野澤家で代々言い伝えられています。発酵期間が長過ぎてもダメです」。最高のしょうゆのために、野澤さんは今日も木桶の中を見つめています。

 

 

野澤食品工業

[住所]村上市塩谷1227
[電話番号]0256-72-0556
[営業時間]9時~17時
[定休日]不定休
[備考]事前予約で工場見学可

 


 

ふたり目の職人さんは「味噌 星六」の星野正夫さんです。農薬を使わない大豆を原料に、自然のおいしさを追求したみそ造りを続けています。

 

 

「地球との共存」がモットー

こうじの香りが漂う醸造の町・長岡市摂田屋。今から42年前に、星野さんは味噌星六を創業、毎日みそ造りに励んでいます。モットーは「地球との共存」。スケールの大きな話のようですが、行うことはシンプルです。「小細工はせず、自然のままに」と、農薬不使用の素材を使い、機械に頼ることなく、昔ながらの製法でみそ造りに励んでいます。

和釜で大豆をゆでたり、あくを取り除いたりと、みそ造りの工程はすべて人の手で行っています。人の手の感覚が、とても重要なんだとか。

 

 

みそ造りの職人は、人ではなく菌だと思っています

「こうじはもちろん、木桶や蔵の中にもたくさんいる菌たち。これが星六のみそを造っています。私は発酵が始まったら状態をチェックするだけなんです」。冬から春にかけて仕込み、秋までじっくり待つ。みそを見守る星野さんの眼差しは、まるで自身の作品の出来栄えを確かめる芸術家のようです。「みそ造りは単純な食品作りではありません。こうじ菌はデンプンを糖に変えますし、乳酸菌は酸味を生み出します。同じ材料、同じ分量で仕込んでも、菌の働きで同じ味にはなりません。これが難しくも面白いところです。菌の力を上手に借りることが、おいしいみそ造りの秘訣です」。

こうじや塩を加えた大豆は、混ぜてから昔ながらの木桶で熟成しています。木桶に長年住み着いている菌も、星六のみそ造りには不可欠なんです。

 

 

何億もの菌の波動が伝わってくるんです

創業以来、自身の信条を貫いている星野さん。実は週に2回、こうじの仕上がりを確認するためにこうじ室に泊まるそう。「こうじのそばで寝ていると何億もの菌の波動が伝わってくるんですよ」。“自然”をとことん追求する星野さんが造るみそは、 使ってみたら違いに気づくでしょう。

米こうじと豆こうじを使い、大きな木桶の中でじっくり発酵させる天然醸造の「昔造りみそ」。1年もの、2年もの、3年ものとあり、熟成期間によって味わいも異なります。

 

 

味噌 星六

[住所]長岡市摂田屋4-5-11
[電話番号]0258-32-6206
[営業時間]9時〜18時
[定休日]日曜

 

 


 

 

いかがでしたか。こうじ室に寝泊まりするなんて、興味深い話ですよね。今回はしょうゆとみその職人を紹介しましたが、1月25日発売の新潟Komachi3月号「カラダにおいしい発酵の秘密」では、他にもチーズ、こうじ、パン職人の合計5名にインタビューしています。

 

それぞれ違った悩みや苦労話があって、興味深いインタビューになっています。興味がある方は、チェックしてみてくださいね。

 

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