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醸造家・掛川史人さんに聞いた日本ワインの魅力

新潟Komachi3月号(1月25日発売号)の第2特集は、「もっとおいしく! WINE LIFE」と題したワイン特集です。今知っておきたいワインにまつわるアレコレから、お家で気軽に飲めるデイリーワイン、女性におすすめしたいワインのおいしいお店、さらに新潟県内全9ワイナリーの紹介まで。すべてのワイン好きに贈る、知って、試して、ワインをもっと好きになる企画です。

 

この記事では、本誌でお伝えし切れなかった、新潟県を代表するワイナリー「カーブドッチワイナリー」の醸造家・掛川史人さんのインタビューをお届けいたします。読み終わる頃には、日本ワインについてもっと知りたくなっているはずです。

こちらは本誌で紹介している三条市にある「0256 bistro6meals」さんのお料理。こちらのお店でも、新潟ワインをたくさん楽しむことができます。


観光ワイナリーを目指して1992年に設立

 

今回お話を伺った掛川史人さん。20代半ばから醸造・栽培責任者を務め、38歳にして10年以上の醸造歴を持つワイン造りのプロです。趣味全開の「どうぶつシリーズ」も多くのワイン好きを魅了しています。

 

--カーブドッチワイナリーを設立する際、なぜ新潟市西蒲区を選ばれたのですか?

掛川さん「醸造家は一年のほぼすべてをワイン造りに費やします。なので、過ごしやすい土地を求めていました。この土地を選んだ理由は、角田山が決め手だったと思います。春にはヤマザクラが咲き、秋には紅葉した山々の風景を眺めることができる。もともと、“ワインを作って売りに行く”ワイナリーではなく、“ワインを飲みに来てもらう”観光ワイナリーを目指して設立したので、ここまでに来る過程(例えば新潟市の中心部から来る場合は大抵の人が海沿いの道を利用しますよね)、その景色や道のりも含めて、角田山麓の自然や四季を味わってもらいたい、そして風景を思い起こさせるようなワインを造りたい。そんな思いがあったからです」

 

--角田山麓の土壌や気候はワインの味にどんな影響をもたらしていますか?

掛川さん「ワインは風土を凝縮して造られるものです。砂地で造るワインは、軽やかで香り豊かに仕上がります。これは、飲み疲れない、ガブガブ飲めるワイン(笑)といっても過言ではありません。そこに、海がもたらすほんの少しの塩味が加わり、この土地でしか造れない味わいのワインが生まれるんです。カーブドッチワイナリーの周辺には、今5つのワイナリーがありますが、どれも味わいは異なります。なぜなら、ワインは造り手の個性も味に反映されるんです。ワインって本当におもしろいんですよ」

ショップやレストランのほか、ベーカリーやスパも併設されている。週末には1,000人もの観光客が県内外から訪れるそう。6月には敷地内のバラが見頃に。

 

 

味わいも香りもさまざま、新潟ワインは個性豊か!

 

--上・中・下越、それぞれにワイナリーがある新潟県。新潟ワインならではの特徴はありますか?

掛川さん「新潟ワインといっても、それぞれ気候や造り手が異なりますから、味わいや個性はさまざまです。豊富な鉱物でできた土壌で造る胎内高原ワイン、雪室で貯蔵する越後ワイン、日本ワインの父といわれる川上善兵衛氏が開いた歴史ある岩の原ワイン。どこも、その土地の気候や土壌を反映したワイン造りを行っています。しいていうなら、ひとつの県にいながら味わいや個性の異なるワインを身近に楽しめること、それが新潟ワインの特徴かもしれません」

上越市にある「岩の原葡萄園」は、日本を代表するぶどう品種マスカット・ベ-リーAを生み出したことでも知られる世界的に有名なワイナリー。こちらも敷地内にはレストランやショップがあり、見学(要予約)も楽しめる。

 

>>今注目を集める日本ワイン、掛川さんが思う今後の展望とは?

今後ますます多様化していく日本ワイン

 

--2018年10月30日から適用がスタートした日本ワインの表示基準の改定。この影響もあり、ますます日本ワインへの注目が高まっていますよね。

掛川さん「この改定は、醸造家にとって本当に大きな節目でした。1990年代、かつては皆フランスのワインを目指してワイン造りをしていました。それが、90年代後半にヴァン・ナチュールというものが生まれ、旬のものを捉えて味を変えていくといった動きが始まりました。そして、2003年頃ですかね、山形県にある『タケダワイナリー』が造ったデラウェアの微発泡ワインが大ヒットし、日本ワインの注目度が一気に上がりました。その頃から、今の時代にフィットする味わいのワインを自由な感覚で造る醸造家が増えていったと思います。あと、2006年に発売したグルメ雑誌『dancyu』のワイン特集も日本ワインブームに拍車をかけたましたね。そして、表示改定を迎えた今。やっとですよ、やっとハッピーバースデー日本ワイン!って感じです(笑)。グレーゾーンがなくなった今、日本ワインに対する印象や造り手の意識は大きく変化していくと思います」

 

--担い手でもある掛川さんが思う、今後の日本ワインの可能性とは?

掛川さん「ひとくくりに“日本ワイン”と捉えるのではなく、ぶどうの品種に合わせた、もっと細やかな産地化が進むと思います。例えば、山形ならデラウェア、長野ならシャルドネといった感じに。今、新しいワインの産地は、固定概念を捨て、“適地適作物”といった考えのもと、ほとんどがその土地に合ったぶどうでワイン造りをしています。土地の特性に合ったぶどう品種を見つけると、ワインのクオリティは一気に上がるんですよ。今後、ますます個性豊かでおもしろいワインが増えていくと思います。と、同時にワインの楽しみ方も広がっていくはずです」

 

--最後に、掛川さんご自身の今後の展望を教えてください。

掛川さん「ここ西蒲区は、アルバリーニョというスペイン産のぶどうが土地の特性にぴったりなんです。現在、ワインとして商品化しているのは少数ですが、3年後くらいには安定供給できるよう、体制を整えています。ほかのワイナリーと力を合わせて、いずれは北陸をアルバリーニョの拠点にしたいですね。また、若手の醸造家は、生食としての人気が下火になり流通していない品種をワインにし、その個性を強みにしたワイン造りを楽しむ人が増えているんです。もちろん、醸造家の数も増えています。自由な気質で作ったエモーショナルなワインが増え、ワインは優しくて楽しむものっていう感覚を広めていきたいです」

 


ワイン業界の第一線で活躍する醸造家・掛川史人さんのお話はいかがでしたか? そんな方が作るワインを、ワイナリーで購入できる新潟ってほんとにステキなところですよね。新潟Komachi本誌を参考に、新潟県内にあるワイナリーを訪れてみてください。風土を凝縮したおいしいワインに出会えるはずです。

 

カーブドッチワイナリー

 [住所]新潟市西蒲区角田浜1661 
[電話番号]0256-77-2288
[営業時間]10時~18時
[定休日]なし

 

※記事のトップで使用している画像は長岡市にあるレストラン「Carnet」の料理イメージ写真です。掲載当時は営業されてましたが、お店のご都合により2月末で閉店されました。

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