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【新潟 器 歳時記】阿賀の清川焼き 光越窯(こうえつがま)

新潟の地で作られる器を季節の料理とともにめぐる連載。第1回目は阿賀町にある「光越窯」です。

「型もの」と呼ばれる技法で作られたグラタン鉢(2,200円)にはロールキャベツをのせて。グラタンやハンバーグなどの洋食はもちろん、海鮮丼や天丼を盛り付け、丼鉢として使っても料理が映える多様な鉢。オーブントースターでの加熱も大丈夫。

使ってこそ気づく 目に見えないこだわり

ぽってりとした厚みのあるフォルムに、土のぬくもりを感じる質感。阿賀町で生まれた「光越窯」の器には、これからの季節に一層恋しくなる、温かい料理がよく似合う。飛び鉋(とびかんな)、指描き、染付など、さまざまな技法を織り交ぜた個性豊かな器の数々は、どんな料理を盛り付けようか想像力がかき立てられる。

作陶家の羽田光範さんのルーツは沖縄の民芸陶器、いわゆる“やちむん”だ。20代後半、自転車での日本一周の旅に出た際、沖縄で民芸陶器に出会った。現地の登り窯で5年ほど修行し、地元新潟に戻って独立。土や釉薬の材料に恵まれた津川・清川高原に、四室連房式登り窯を自ら築いた。それも登り窯に必要な土地の傾斜作りから行ったという。

ものづくりへの熱意と探究心にあふれる羽田さん。 「ろくろは引けて当たり前。使う人にとって、いかに使いやすい器にするかが重要なんです」。そう語る羽田さんの器は、厚みがあるのに、見た目の印象より軽く感じる。「重心の位置によって、重さの感じ方が変わってきます。半分より上が重いと軽く感じるんですよ。普段使いには軽い方がいいから、そこは意識しています」。

ほかにも、茶碗の口あたりの良さや指で支えやすいカップの持ち手の形状など、心地よく使うためのこだわりが随所に散りばめられている。使った人にしかわからない光越窯の器の魅力。使うたびに愛着が湧く、そんな逸品ばかりだ。

光越窯の器の数々

汁気が多い沖縄のちゃんぷるからアイデアを得たという浅鉢(6,600円~)。「炒めものや汁気のある料理を盛る時は、少し深さのあるこういう鉢が使い勝手がいいんです」と、羽田さん。白い点は登り窯で焼成した時にできる「目跡(めあと)」と呼ばれる印。
飲み口を唇の反りに合わせて作ったコーヒーマグ(2,200円~)と湯飲み(800円~)。どちらも飲み物がするっと入ってくる。コーヒーマグの持ち手の幅は、第一関節と第二関節の間にフィットし、カップの部分に指が当たらない設計になっている。
ごはん茶碗(1,500円~)。ふちが反ってないのは、〆にお茶を入れて飲む習慣から生まれたもの。汁物がかきこめるよう、湯飲み感覚で使えるふちになっている。高台も高さがあり、逆さまにした茶碗をひっくり返すのもラク。使いやすくて出し入れしやすい、まさに日常使いの器。
阿賀町のにしん鉢(5,000円~)。にしん鉢といえば会津本郷焼きが有名だが、津川にもにしんのこうじ漬けを作る風習があり、それ用の鉢として作ったもの。沖縄の壺屋焼の伝統技法であるもみ殻を混ぜた粘土を材料に、沼垂産焼酎徳利の製法や阿賀町でとれた「鬼板の釉薬」で作られている。

作陶家Profile

羽田光範さん/新潟市生まれ。沖縄の「壺屋焼」との出会いをきっかけに陶芸の道へ。現在は作陶の傍ら、陶芸教室の講師なども務める。2021年3月中旬には「北方文化博物館」にて、毎年恒例の個展を実施予定。

店舗情報

店舗名 光越窯(こうえつがま)
住所

新潟市沼垂東4-2-19 

TEL 090-6938-1848
営業時間 10時~13時、 14時~17時(都合により変更あり) 
定休日 木・日曜
駐車場 なし
備考

※実家を改装したショップ兼工房。一番種類がそろうのは阿賀町にある「狐の嫁入り屋敷」。

photo:中田洋介 <中田写真事務所>

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