毎年、稲川淳二さんが「怪談」を生の語りで楽しませてくれる「MYSTERY NIGHT TOUR」。毎年動員数を伸ばしているというこの人気の「怪談ナイト」が、今年も9月30日(日)に、りゅーとぴあ 劇場で行われます。

 

「これだけ長く、1年も休まずに私が『怪談』を語り続けてこられたのは、会場に足を運んでくださる皆さんのおかげです。毎年、公演の日を楽しみに待っていらっしゃる方々の期待に応えたいと、私ばかりじゃなく、舞台を作るために働く大勢のスタッフや、チケットを売ってくれるイベンターの人たちなど公演に関わるいろいろな人の力が1つになって初めて、私は『怪談』をお届けできるんですよ。その中でも、一番大きな力になってくださるのが、私の話を聴いてくださる皆さんです。聴いてくれる人がいなかったら、始めから『怪談』なんて成り立ちませんから」

 

 

 

 「会場に集まる多くの人たちのおかげで続けてこられた」と、ご自身が言う「怪談」の公演が始まってから、今年で26年。今年も全国各地へ「怪談」を届けるこのツアーの最中、の8月21日(火)に、稲川さんは71歳の誕生日を迎えます。

 

「今のような形で『怪談』を語り始めたのは、1993年、私が45歳になる年でした。その後も語り続けていく中で55歳のときに、この公演により多くの力を注ぎたくなって、それまで出演していたテレビのレギュラー番組やドラマに出るのをやめたんです。なぜかというと、『怪談』をやるのはとても大変だからなんですよ。聴いてくださる方に本当に楽しんでいただける話をまとめるには、まず題材を見つけに方々(ほうぼう)へ旅に行って、今度はその題材を生かして語るために自分でしっかり構成する。さらにはどう語ってしっかり届けるか、演出を考えて舞台のスタッフと相談しなくちゃなりません。自然とテレビの仕事をしている時間はなくなっていきました。今では『怪談』を中心に、私の1年は巡っているんです」

 

 毎年「怪談」を語るツアーを続けるために重ねる準備の過程の中でも、ご自身が最も大切にしているのが、話す内容を詰めて、多くの人に聴いて納得してもらえる形に作り上げていくことです。

 

「私が聴いていただいている『怪談』は、どれも皆さんがいろいろなところで耳にされたことがあるようなうわさ話の断片から生まれます。例えば、あそこでちょっとした変なことが起こったとか、最初のきっかけはそんなものなんですよ。でもその小さな話のカケラを場所を変えて、丁寧に拾っていくと、それがつながって、1つの物語みたいなものが感じられるようになっていくんですね。考古学で、発掘された何かの破片をいくつも丹念に集めて並べてみると大昔の土器の形が再現できる。そんな感じに似ていますね。そうして作っていくので、話によっては皆さんに聴いていただけるようになるまで、とても長い時間が掛かることがあるんですよ」

 

 

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