1993年の結成以来、アクロバティックなパフォーマンスを組み合わせた斬新なアプローチで、和太鼓をはじめとした日本の伝統楽器の新たな可能性を切り開いているDRUM TAO。今や世界26カ国、500都市での公演実績を誇り、全世界で800万人を超える観客を熱狂させています。新作舞台「ザ・ドラマーズ」を引っ提げて全国を飛び回り、10月には新潟での公演も控えている彼ら。次世代のチームを担うふたりのエース、中田勝平さん生越寛康さんに、あらためてそのパフォーマンスの魅力を聞きました。

 

 

■DRUM TAOの魅力とは?

 

―世界を舞台に活躍されているDRUM TAOですが、あらためてその魅力を教えてください。

中田勝平さん(左)と生越寛康さん(右)

 

生越寛康さん(以下、生越さん)「和太鼓はとにかく響きがすごいんです。みなさん、お腹の底まで響くと言ってくれますね。それでいて、どこか懐かしさを感じられるのも和太鼓の魅力です」

 

中田勝平さん(以下、中田さん)「和太鼓だけじゃなくて、箏や三味線、篠笛などを使っているのもDRUM TAOのポイント。いろんな和楽器を使った自分たちらしい音楽ができていると思います」

 

生越さん「和楽器って、特に若い人にとっては堅苦しい印象があると思うんです。でも、タオにはそういうところが全然なくて、全身を使ったパフォーマンスも織り交ぜた、従来の和楽器のイメージを払拭する新しい舞台になっている。そこが魅力だと思います」

 

中田さん「もちろん和楽器を中心にしていますが、最近ではドラム、あるいは各種の民族楽器を取り入れる試みも。新しい楽器に挑戦するのは単純におもしろいですね。それに意外と和太鼓ともマッチするんです。今まで聞いたことがないような、新鮮な音楽を日々模索しています」

 

伝統的な和太鼓の魅力を最大限生かしつつ、現代的な試みにも果敢に挑戦し続けているのがDRUM TAOの魅力。印象的だったのは、自分たちのカンパニーを親しみを込め、「タオ」という愛称で呼んでいたこと。おふたりの愛着が感じられました。そんなふたりに、DRUM TAOとの関わりを聞きました!

 

 

■DRUM TAOに入ったきっかけ

 

―おふたりはDRUM TAOに入る前から和太鼓をやってらしたんですか?

 

 

生越さん「もともと小学校からやっていたんです。そのときは地元・京都のお祭りで叩いていたくらいですけどね(笑)。で、高校生のときに、先輩から『DRUM TAO』というチームがあるよって聞いて。大阪で公演があったので、観に行ったんです。ほんの軽い気持ちだったのですが、もう『すげえ!!』と一発KO。それまで自分が親しんでいた伝統的な和太鼓の世界とは全く違う表現に身震いしました。派手な衣装でパフォーマンスを交えて…なんて初めてだったし、ソロひとつとっても、あんなにアグレッシブに楽しそうに打つのは観たことがなかった。『太鼓ってこんなことができるんだ』『こんなアプローチがあるんだ』と衝撃を受けましたね。和太鼓の演奏というより、まるでショーを観ているような。ちょうど進路を考え始めたくらいの時期だったので、興奮にまかせてすぐに履歴書を送ったんです」

 

 

中田さん「僕ももともと地元・大阪のチームで太鼓をやっていたんです。その時たまたまタオを知って。小学5年生のときだったかな。それで観に行ったんですが、やはり生越と同じように衝撃を受けて。『これがプロか!』と。そのときから、将来は太鼓奏者になろうと決めていたんです。で、高校卒業時にタオへ。当時は親に反対されながら勝手に履歴書を送ったり、なかなか大変でした(笑)。もちろん、今は応援してくれてますけどね」

 

―そんなドラマがあったんですね。実際に入ってみていかがでしたか?

 

中田さん「入る前はずっと太鼓叩いてるのかなって印象でした。でも全然そんなことなくて。もちろん太鼓以外の練習もしますから。基礎的な体力トレーニングから、太鼓以外のパフォーマンスまで、最初はハードで大変でした。その分刺激的でしたけどね。あとは実際にメンバーと触れあうと、こんな人だったんだ、という発見があるのが楽しい。タオは集団生活をしているので、そういうところに気付きやすいのかも」

 

生越さん「集団生活は慣れるまでに時間かかるよね」

 

―集団生活で生み出される連帯感が、舞台での一体感にも繋がるんでしょうね。

 

生越さん「最初は慣れるのに精一杯でしたけど、確かにそういう面は大いにあるかもしれないですね。お互いのことを理解できてくると、パフォーマンスにもいい影響がありますから」

 

 

■日本から海外へ、国境を越えたパフォーマンス

 

―海外の公演もバリバリこなしてらっしゃいますね。お客さんの反応はやはり違うものですか?

 

生越さん「初めての海外公演はやはりびっくりしました。盛り上がりが違うというか。スタンディングもしてくれるし」

 

 

中田さん「僕が一番びっくりしたのは、アメリカでの公演。日本だったらお客さんは拍手してくれるじゃないですか。でも、アメリカのお客さんは足も鳴らすんですよ。地面をドンドン踏んで。まるで会場が揺れているよう。『なんだこれは!?』とあっけにとられていると、海外慣れしてるメンバーからこれが普通なんだよ、って(笑)。軽いカルチャーショックというか、異文化に触れてるのはお客さんだけじゃなくてこちらも同じなんですよね。そういうのもまた刺激的です」

 

―海外の方に受け入れられているのはどんなところだとお考えですか?

 

 

生越さん「タオの舞台には言葉もないですし、劇のようなはっきりとした物語があるわけでもありません。僕たちが目指しているのはもっと漠然とした『イメージ』の表現なんですね。曲ごとのコンセプトがやはりあって、それは言語的じゃないからこそ、国境を越えて伝わるのだと思います。よくパッションが伝わったという感想をもらうのですが、そういうコミュニケーションはやはり成り立っているんだろうな、と」

 

中田さん「海外の人にはよく、なぜここまでぴったり合うんだ、と言われるんです。僕たちからすれば当然なんですけど、やはり珍しいみたいで。バッチリそろった動きに反応していただいているという感触はありますね。加えて、いろいろなことを試みてはいますけど、やはり根幹は『和』なので。日本の伝統文化に触れられる興奮というのは大きいのでしょうね。それをしっかりと表現できているという自信もあります」

 

 

海外での公演も含めて、さまざまな試みを続け、和太鼓の可能性を拡張し続けているDRUM TAO。続いては、おふたりに今回の新作「ザ・ドラマーズ」について聞きました!

 

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