2019年1月に発売したセルフタイトル・アルバム「Hilcrhyme」以来1年半ぶり、通算9枚目のオリジナルアルバム「THE MC」を発売したHilcrhyme。どんな思いでアルバムを完成させたのか。“マイクを持った指揮者”として会場や空間をコントロ―ルし、独自の世界観を提示してきたMC TOC(新潟県出身)にインタビューを敢行。大阪・新潟・東京を巡る『Hilcrhyme TOUR 2020「THE MC」』についても語ってくれました。
開示してきたMC TOCの“覚悟”
――再始動の舞台となった2018年のワンマンライブ『Hilcrhyme LIVE 2018「One Man」』から早2年。この2年間はTOCさんにとってどのような期間でしたか?
「再始動ライブを終えてリリースした『Hilcrhyme』とそのアルバムツアー『Hill Climb』で、しっかりと新体制のHilcrhymeを全国に示そうと思いました。その後、Hilcrhymeとしては初めてゲストボーカルに仲宗根泉(HY)さんを迎え、シングル『事実愛』を制作。リメイクベスト『SUN』と『MOON』をリリースし、過去楽曲を聴ける状態にして『SUN&MOON』ツアーを回りました。年に2回のツアー、計33公演をやるという前例のない一年を終え、ソロアルバム『立国宣言』をリリース。全国4カ所でツアーを行いました。(ファイナルだけコロナ禍により延期)。そして、そこから半年ほどかけてニューアルバム『THE MC』を制作し、リリースしたばかり。とにかく休みを作らず動き続けた2年でしたね」
――ニューアルバム「THE MC」をTOCさんは“最高到達点”と表現されていますが、前作「Hilcrhyme」からどのような心境の変化がありましたか?
「今回の大命題は『俺だけのHilcrhymeを創る』。トラックもラップもミックスも、アートワークも。MVに至っては自分で編集までしています。1人になって0からフルアルバムを創るのはこれが初めて。2人体制が長かった分、大きな覚悟が必要でした。『THE MC』は文字通りMC TOCだけの世界観。ファーストアルバム『リサイタル』にならって今一度しっかりとタクトを振り、マイクロフォン・コンダクター(MC)として場を支配する。そんな心境でした」

――リードトラック「グランシャリオ」は夜のシーサイドラインをドライブしているイメージで書かれたそうですね。トラックメイクでこだわった点はどんなところでしょうか?
「シーサイドラインから弥彦スカイラインに入り、満天の星空を見に行くというイメージで曲を創りました。昔から仲間とよく遊びに行っていた場所です。恋愛に落とし込んでいるのは空想ですが(笑)。苦手としていたアップテンポの4つ打ちに挑戦してみたんですが、意外とうまくできたので、また一つ壁を越えられた気がします」
――「ヨリドコロ」のMVはTOCさんの提案でファンの方々の写真を集めたそうですが、初めてMV制作を行って手応えはいかがでしたか?
「シングル『想送歌』をリリースした時にも同じようなことをやり、とてもファンの方が喜んでくれたのを思い出して呼びかけました。その時は映像制作の方に制作してもらいましたが、今度は自分でやってみたいなって。歌詞や曲に合った写真を選び、音に合わせて画を展開していくことで、心に訴えかけるものができたと思います」

――ドラマ「わたし旦那をシェアしてた」の主題歌でもある「事実愛 feat. 仲宗根泉(HY)」は、どのように制作されたのでしょうか?
「仲宗根泉さんは沖縄在住なので、レコーディング立ち会いのため沖縄まで行ってきました。女歌であるこの曲は、彼女のボーカルが乗ることによってより広がりを持ち、ボトムがしっかりとして、説得力が100倍増しましたね。歌い手としても、人としても、尊敬できるアーティストです。ミックスは少し難航しましたが、いい塩梅にまとまったんじゃないでしょうか」
――表題曲「THE MC」からは、「今後も俺はHilcrhymeとしてやっていくんだ」という強い意思表示をリリックから感じましたが、実際はいかがでしょうか?
「メジャーデビューから11年を数えるHilcrhymeのセルフボースティングを書きました。ラッパーであること、地方在住であること、紆余曲折を経て1人になったこと、ファンとの絆、未来ヘの啓示…。場を支配するMCとしてこれからのHilcrhymeを強く創っていく、という覚悟を示した曲です」