2002年のデビューから常に新潟のHIPHOPシーンを牽引してきたラッパーのUSUさん。2018年秋に自身のTwitterに投稿された突然の引退宣言を機に、それまでコンスタントに活動を続けてきた音楽活動を停止。引退に至った理由は明かされず、ただ不穏な空気が漂っていました。そして迎えた2021年。2年半の沈黙を破る、待望の復帰シングル「Too Late」、さらにEP「#at2018」を続けてリリース。インタビューに応じてくれたUSUさんは「いつか全部話したいと思っていた」と、伝えたくても伝えられなかった真実を教えてくれました。
どん底の2018年、はい上がった2020年
――復帰作リリースおめでとうございます!引退後の2年半はUSUさんにとってどんな期間でしたか?気になる引退の理由とは…?
「ありがとうございます。正直なところ、引退した当時は精神的にも肉体的にも限界でした。多作な時期が続いて、一人でプレッシャーを抱えて。さらに家族との別れや、糖尿病とアルコール依存症の併発などもあり、とにかく辛くて仕方がなかった。『こんな状況になってしまったのは全て音楽のせいだ』なんて思いながら、酒に逃げてしまったんですよね。徐々に自分でも病気と向き合う決心をして、病院に行きはじめました。だから、引退後の生活は毎日が病気との戦い。引退をTwitterだけで伝えて突然姿を消したことを、ずっと後悔していました」
――強いプレッシャーを感じていた理由はなんだったんでしょうか?
「20歳でデビューしてからずっと充実した音楽生活だったけど、頭のどこかで『自分は曲を出し続けなきゃいけない』『MCバトルに挑まなければいけない』と自分自身を追い込んでいたような気がします。毎回アルバム制作では、前作の内容を上回るものが出来たら発表しようと思っていましたが、引退直前は全く納得いくものが作れなくなっていました。病気の治療を始めてからすぐに音楽への意欲が戻って来て、マイナスな状況をプラスに変えられるのも音楽しかないと確信しました。2020年10月から復帰に向けて動き出したんです」
スイッチが再び入った復帰作「Too Late」

――復帰シングル「Too Late」はどのような経緯で制作されたのでしょうか?
「『Too Late』には一緒に作ったYAGIくんの力が大きく反映されています。ちょうど引退する直前に『一緒に曲を作ろう』と話していたのに、出さないまま辞めてしまって。『復帰するならまずは彼とスタートしなくちゃ筋が通らない』と思ったのと、エネルギーを分けてほしかったのもあります(笑)。僕が休んでいる間もすごく精力的に活動していて、そのバイタリティーあふれる姿にいつもパワーをもらっていました。トラックは少し切ない感じに仕上がっています。意外すぎないかと最初は戸惑いましたが、YAGIくんから『USUの全部をさらけ出そうよ』と言われて納得しました。この曲には引退を宣言した当時の俺がリアルに表現されています。トラックができると2日間でリリックを書き上げて。そこでスイッチがようやく入りました。復帰作1発目をどうするか、ものすごく悩んでいたときに彼に声を掛けてもらって本当に良かった。自然と2年間のことを投影することができました。休んだことにも、YAGIくんと復帰作を作ったことにも、全てに意味があったなと今では感じています」

――周囲の反応はいかがですか?
「SNSで『Too Late』への反響や感想をもらって。プチビーフ(楽曲上でのバトル)も起こるくらいでした。全部ひっくるめて『こういう世界にいたな』って思い出させてくれるきっかけになりました。投稿してくれた全ての人に言いたいのは、『次の曲聴けば分かるよ』ってこと。何を言われても全く考えは揺るがなかったです」
ライブで魅せる、新生USU

――1カ月と経たない内にEP「#at2018」をリリースされましたが、「Too Late」とは全く違う印象でしたね。
「『#at2018』は、2018年までに作っていたアルバムの中から5曲を選んだ作品です。『HIPHOPをガンガンやってくぞ』と気持ちを偽って作っていた自分が、2年置いたことでようやく曲に追いついてきた。あの頃にこの曲を出していても、自分に嘘をついてやっていたから、ハマらなかったと思います』
――なかでも、まず聴いてほしい1曲を挙げるとしたらどの曲ですか?
「『Factor』かな。引退している間、自分で一番聴いていた曲です。プロデューサーのDJ KENZIはずっと一緒に音楽づくりをやってきた仲。すでに次のアルバムも一緒に作りはじめているので待っていてください。4月にシングルを2曲リリースしてから、夏から秋くらいまでにはアルバムを出す予定です。シングルはどちらもMVを撮る予定です。1曲は新潟のラッパーとのコラボ。まだ名前は言えないけど、ラップを始めて2年くらいなのにめちゃくちゃかっこいいんです。俺が休んでいた2年間にものすごくラッパー人口が増えていて。その中でも彼はダントツです。個人的にですけど」

――盛りだくさんな1年になりそうですね。
「年内には2枚アルバムを出せたらと。DJ KENZIと作ってる作品とは違うアプローチのアルバムを。他にも単発のリリースも予定しています。2年間で体力は充電できた。心の整理もできた。パワーアップした姿を早くみんなに見せたいです。春から夏にかけてワンマンライブも開催する予定です。コロナ禍でもライブができる場所を守り続けてくれてる人達に感謝します。本当にありがたいです。やっぱりライブが全てだから、みんなにも来てほしい。ライブは勝負の場。ライブでこそアーティストの本質が見えると思っています。ライブに来てくれたファンにまずは『ごめんね、ただいま、ありがとう』と言いたいです。期待を裏切らない展開をここから見せていきます」

【リリース情報】
シングル「Too Late」USU&DJ YAGI
デジタルリリース
価格:250円
E.P.「#at2018」
デジタルリリース
価格:1,070円
Again/Factor(Chorus by Takizawa Steph)/Dream/Zombie/Lost,PM22(feat.KRYZ) 全5曲収録