愛らしい図柄の陶板や迫力あるモザイク壁画など、陶芸の既成概念にとらわれない作品を作り出した、北欧フィンランドを代表するアーティスト、ルート・ブリュック(1916~1999年)。
2020年10月10日(土)から新潟県立万代島美術館で、企画展「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」が開催されています。初期から晩年に至る陶を中心に、テキスタイルや版画を含む、約200点を見ることができます。

器に描かれた日々の一コマ

《コーヒータイム》1945年 タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵
《東方の三博士》1944年 タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵 

コーヒーを楽しんでいる生活の一コマや、動物、草花などを絵付けした器の数々。小皿から大皿まで、どれも優しい色使いでとてもかわいらしいです。

左《果物の皿》1950年代初期 個人蔵/右上《水差しとレモン》1950年 タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵/
右下《梨籠》1950年 タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵

こちらは対照的に色や線が強く表現されたモダンな作品。当時の美術潮流の影響や、結婚・出産といった自身の経験から、技法やモチーフも変化していったそうです。

一部の作品は撮影可能です。

壁面に舞う蝶たち

そしてさらに足を進めると見えてきたのが、今回の企画展のシンボルとなっている「蝶」を題材にしたシリーズ作品。

《蝶たち》1957年 タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵

陶板に一つ一つ描かれた蝶の文様は、実に細やか。この作品には蝶の研究者だったブリュックの父・フィリックスとの思い出が背景にあるそうです。

立体作品も。さらに洗練されたものへ

《都市》1958年 タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵

こちらは立方体とタイルで構成された彼女の代表作の一つです。大小さまざまな陶の作品を水平に広げ、街並みのような空間を作り出しています。

《スイスタモ》1969年 タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵

さらに小さいタイルで構成され、これまでとは異なるすっきりとした印象の作品。色鮮やかな釉薬(うわぐすり)が、白いタイルに映えます。

光と影が加わった新たな表現

《色づいた太陽》1969年 タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団蔵

凹凸のあるタイルから生まれる影で太陽の輝きを表現しているのでしょうか。高さに差を出して影が濃く出るように工夫し、円の輪郭にしているのがおもしろいです。

題材や技法さまざまな、自由な表現が満載でした。会場内ではブリュックの人生をたどるドキュメンタリー映像も上映されていますので、作品鑑賞と合わせその背景にも触れてみてはいかがでしょうか。


関連情報◆10月18日はブリュックのバースデー!

10月18日のブリュックの誕生日にちなみ、下記の期間中に蝶がモチーフの小物などを持参または身に着けて来場した人にはプレゼントがあるそうです

実施期間/10月10日(土)~18日(日) ※要観覧券。毎日先着50名

※ほか、会期中のイベントなど、詳しくは新潟県立万代島美術館の公式サイトをご覧ください。

※許可を得て撮影しています。

Tapio Wirkkala Rut Bryk Foundation’s Collection /EMMA – Espoo Museum of Modern Art 
© KUVASTO, Helsinki & JASPAR, Tokyo, 2018 C2531

イベント情報

イベント名 企画展「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」
開催期間 2020年12月6日(日)まで※月曜休館(10月26日、11月23日は開館)
開催時間 10時~18時(観覧券の販売は17時30分まで)
会場 新潟県立万代島美術館(新潟市中央区万代島5-1 万代島ビル5F)
料金 一般1,100円、高大学生900円、中学生以下無料
お問合せ先

新潟県立万代島美術館
TEL 025-290-6655

外部リンク http://banbi.pref.niigata.lg.jp/