1980年代半ばから現在に至るまで、休むことなく活動を続け、2019年2月13日(水)に18作目の新たなオリジナルアルバム「bless You!」をリリースしたオリジナル・ラブ。その都度、最適なミュージシャンを集め、あるいは田島さん自身の手だけで、クオリティーの高い音楽を生み出しています。新潟では、Negiccoの「サンシャイン日本海」をプロデュース、「光のシュプール」を編曲したことでも広く知られる田島さんにとって、オリジナル・ラブは、どんな存在なのでしょうか?

 

 

「僕にとって、オリジナル・ラブは『屋号』みたいなものなじゃないですかね(笑)。要は、活動を始めたころから今も、ただいい音楽を生み出したいと思って、オリジナル・ラブをやり続けているんですよ」

 

 そう田島さん自身が語るように、オリジナル・ラブは「いい音楽」を生み出すために、田島さんが発想し、それを具現化するために必要とされる優れた人材が集まって、その成果を送り出す、まさに「屋号」と呼べる場なのではないでしょうか。そのことを裏付けるように、これまでオリジナル・ラブが放ってきた「接吻」をはじめとする数々の曲は、今もライブで多くの人たちの心を動かし続けています。

 

 

「単に『いい音楽』であるということに重ねて、僕がずっと目指してきたのは、『ポップス』であることです。マニアックな音楽であるだけでなくスタンダードとして何年も聴ける音楽を作りたかった。フェスやイベントが音楽活動の主な現場である今、ライブでその場が盛り上がる曲ばかり考えてしまいがちなのですが、やはり曲としていい曲をつくりたい気持ちがあるんです。部屋や車の中でも同じように、聴いた皆さんに、本当にいいと感じてもらえる曲を作り続けていきたいですね」

 

 オリジナル・ラブが生み出す「いい音楽」とは、多くの人たちに抵抗なく受け入れられて、しかも長く印象に残る曲。加えて、それぞれの曲が生まれるとき、その時代の空気が封じ込められていて、だからこそ時が流れても、聴いた人たちの記憶や印象に残り続ける曲です。そうしたすべての条件を満たす曲をつくるのは、とても難しいことですが、今回の最新アルバム「bless You!」の収録曲の中でも、特に「ゼロセット」は、それに成功した曲だといえそうです。

 

 

「この曲は、アルバムの制作に先立って、2年前にできていたんです。ただ曲に合う歌詞がなかなか思いつかなかったんですよ。それで1年間くらい保留にして再度アルバム制作に入った時に、僕が感じていたことを正直に書いてみたんです。そうしたら、この曲にピッタリの歌詞になった。『ゼロセット』という曲が完成して、アルバム全体の方向性も見えた気がしました

 

 「ゼロセット」は、陸上競技の短距離走を基本的なイメージにしています。曲名の通り、ストップウオッチが「ゼロ」に「セット」され、スタートラインにつくランナーの期待や不安、モチベーションが高まっていく心情に、田島さん自身とこの曲を聴く人たちを重ねています。その歌詞をさらにしっかり伝えるように、曲調もスピード感にあふれていて、軽快なリズムが曲を推進し、流麗な弦楽器群の音の重なりの明るく華やかな響きに彩られています。

 

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