Twitterでの再生回数が、公開から1カ月ほどで150万回超。昨年大きな人気を集めたDA PAMPの「U.S.A.」を「あの方」風に歌った映像(もちろん編曲も)を自ら作ったのが、ポセイドン・石川さんです。この作品には、いきものがかりの水野良樹さんやPerfumeのプロデューサーとしても知られる中田ヤスタカさんも絶賛。今年2月にはメジャーファーストアルバム「POSEIDON TIME」をリリースし、自身のライブに集まる多くのファンを熱狂させています。また、7月に湯沢町で開催される「FUJI ROCK FESTIVAL ’19」への出演も決定。ますます飛躍が期待されるポセイドン・石川さんにお話を伺いました!

 

「あるとき、山下達郎さんのアルバムを友人がくれたんです。そのころ、もう音楽活動を始めていたんですが、海外のジャズやポップスばかり聴いていたので、『なんだ、これは!』と大きな衝撃を受けました。以来、やみつきになって、どうしたらこんな音楽ができるのか、分析というとおおげさかもしれませんが、どう作られているのか、知りたくなってしまったんです」

 

 

ジャズピアノを独習して、その理論と奏法を身につけ、音楽活動を始めていた石川さんが「日本のポップスでも水準の高い、しかも楽しい音楽を生み出している人がいる」と、あらためて認識させてくれた「あの方」の音楽は、まさに天啓と呼んでも言い過ぎではなかったようです。

 

「以前から、日本の音楽で人気のある曲は、シンプルな構造のものが多いと感じていたんです。もちろん、僕もそういう曲の中でも好きな曲はありましたけど、音楽的な面白みという意味では、もう1つ、物足りない部分もあるなと思っていました。だから、ほとんど海外の音楽ばかりを聴いていたんです。ところが、山下達郎さんの音楽に出会って、日本の音楽でもここまでできるんだと、勇気づけられた気がしました。山下さんは、外国の音楽の作曲や編曲の技法をしっかりご自身のものにしながら、日本の人たちに愛される曲をたくさん、しかも長い間にわたって作り続けてこられた方ですから、僕もこんなふうに挑戦してみたい!と思ったんです」

 

 

「あの方」の音楽技法を知るうちに、自分のオリジナル曲を作るとともに、カバーにも挑戦してみようという気になったといいます。

 

「山下達郎さんが絶対にカバーしないだろうと思える曲をカバーしてみたらどうなるんだろうという、最初は僕の妄想みたいなことから始まったんです。多くの皆さんが知っているはずの曲だけど、山下さんの音楽のイメージとは離れ過ぎている。そのギャップを僕なりのやり方で埋めてみたら面白がってもらえるかもしれない。そう考えたんですよ」

 

 

こうして動画サイトで注目を集めた「U.S.A.」をはじめ、アルバム「POSEIDON TIME」で聴ける「紅」(オリジナルは、X JAPAN)、「ありがとう」(同いきものがかり)、「リンゴ追分」(同美空ひばり)といった、ポセイドン・石川さんのカバーが生まれました。

 

「皆さんがよくメロディーをご存知の楽曲ばかりですから、そのメロディーをそのまま生かしながら、山下達郎さんのような発想で、リズムを変えてみたり、編曲していろいろな楽器の音を重ねてみたり、コーラスを自分1人で多重録音して加えたりして、アレンジを作っていきました」

 

 

これらのカバーは、元々の曲のイメージと、実際に聴こえてくる音の連なりのギャップが面白いのはもちろんですが、緻密に構成された曲の洗練された印象も同時に、心に残ります。

「そういうふうに聴いてもらえるように曲を作り上げることが、山下さんの音楽からいちばん学んだ部分ですね。複雑で難しい手法を使って曲を作ってはいるんですけど、それを完成させていくとき、無駄な音は省いて、必要最低限の要素だけにしていくことで、メロディーと歌詞の言葉を強く印象づける。このことは今もずっと心がけています」

 

「これからもっと進化させて、いろいろな曲を届けていきたい」(次のページへ)