伊東歌詞太郎さんが公に素顔を見せるのは、ライブのときだけ。メディアには常に「狐のお面」をつけた姿で登場し、シンガーソングライターとしての活動を続けています。普通なら意識しなくても、歌っている人の見た目の印象によって、曲に対して先入観を抱いてしまいがちですが、伊東さんの曲はどれも、そうした先入観を持たせることなく、多くの人たちから自然に共感を呼んでいるといえるでしょう。現在、配信とサブスクリプションで聴ける最新曲「つながって」も、そんな伊東さんが自ら作って歌った曲です。

 

 

最新曲「つながって」

 

 

「当たり前のことかもしれませんけど、そもそも僕自身、音楽が大好きなんですよ。つまり音楽を愛しているんです。だから、どの曲も大勢の人に聴いてもらうことを前提とするのではなく、僕自身の愛を注いで作っています。そうするのが、僕にとってはごく自然なことなんです」

 

 

そうやって、愛を注いで作った曲であれば、前提として考えなくても大勢の人たちに、確かに伝わる。そういう経験を最近できたと、ご自身はいいます。

 

Photo by 大塚秀美

 

「今年(2019年)の1月に初めて単独で、中国の北京と上海でライブを行ったんです。インターネットを通じて曲を発表してはいますけど、言葉も文化も違う国ですよね。でも、ステージで愛を込めて歌ったら、その場の大勢の人たちがしっかり僕の歌を受け止めてくれたんです。音楽は、言葉や国の違いを超えるんだと、そのときに実感しました」

 

この経験を経て生まれた「つながって」は、今年9月から10月に開催される「第74回国民体育大会 いきいき茨城ゆめ国体」の文化プログラムとして行われる「ぷよぷよeスポーツ」大会応援ソングでもあります。

 

「eスポーツの大会が国体で行われることは、応援ソングを作ってほしいという依頼を受けるまで知りませんでした。まして、オンラインゲームについても普通の人たちと同じくらいの知識しかないんです。だから、曲を作るときにはゲームやeスポーツのことを無理には意識しませんでした。その代わりに、大きな大会の応援曲ですから、直接は知らない人同士がそのときに出会って、お互いに競い合う。そして、認め合いながら人間同士のつながりを深め合うということを大切に考えました。そして、今までの曲と同じく、愛を込めて作りましたね」

 

そう語る「つながって」は、eスポーツやコンピューターゲームを連想させる機械的な曲調というより、優しく穏やかな歌詞と旋律が印象に残る曲です。

 

「さっきもお話ししたように、もし僕がeスポーツのことを過剰に意識して作ったとしたら、その曲は応援ソングに選ばれることはなかったと思うんです。そうではなくて、国体が終わったあとも、自然に聴いてくれた人の記憶に残っていく曲。同じように、eスポーツも、そのときに盛り上がるだけじゃなくて、より広く普及していってほしい。そう国体に携わる皆さんが思っているから、この曲が応援ソングに選ばれたんじゃないかと僕は思っています」

 

「何より楽しい気持ちになっていただけるように当日は全力を出し切ります」(次のページへ)