こうやって深く信頼し合う2人が作ってきたからこそ、壮大なエンターテインメント作品として人気を博している地球ゴージャスの公演。では今回の「ZEROTOPIA」では、どんな物語を舞台の上で展開するのでしょうか?現時点で明らかになっているのは、登場人物たちが乗った大きな船が沈み、生き残った者が、地図にない、色彩もない島にたどり着くという、物語のイントロダクションのみですが……。

 

 

岸谷「舞台に出てくる人間は、それぞれに背負っているものを隠すところからストーリーを始めようと思うんです。だからお互いについて知っていることはない。その上、たどり着いた島は地図にも載っていなくて、色彩も失っている。要するに何もない、始まりは『ゼロ』です。この『ゼロ』から、どんなことが生まれてくるのか。『ゼロ』の状態である人間たちが何を始めていくのか。同時に、お互いに対する知識がないので、疑いも生じてきます。船は沈んだのではなく、沈められたのではないか? 島にはたどり着いたのではなく、たどり着かされたのではないか? だとすれば、生き残った人間たちは、島に集められたのではないか? そうだとしたら、何のために? 何もない『ゼロ』であるはずの島で、疑問は次々に生まれていきます。『ゼロ』に疑問が加わって、ディストピア、理想とは間逆の世界に変わっていくのか? それとも最後にはユートピア、理想郷が現れるのか? それを登場人物たちの言葉と動きで描き出せたらと思っています」

 

 

寺脇「設定としては文字通り、何もないところから、僕らはほかの出演者の人たちと舞台を作り上げていきます。ご覧になる皆さんの中には、今、明らかにできる物語の発端から、けっこう重い話になるんじゃないかと心配される方がいらっしゃるかもしれません。でも、僕らとしては、今度の公演で、その『重さ』に真正面から取り組みたいんですね。『重さ』にしっかりと向き合う。そのことで生まれる醍醐味(だいごみ)、面白さをお伝えしたいと思うんです。変な言い方になりますけど、『すがすがしく重い』。そんな公演にできると確信しています」

 

「新潟で『いい芝居ができた』と実感したい」(次のページへ)