この出来事をきっかけに琴音さんはライブ活動を始めました。

 

琴音「ライブを始めたのは中学に入った頃でした。最初はカバーばかりで、お母さんにピアノを弾いてもらって、私はマイクだけを持って歌っていました。ギターは小学4年生くらいから趣味で弾いていたんですが、最初は人に見せられるような感じじゃなかったので練習して、ライブを始めてから1、2年経った時に、自分のギターを持って自分の歌を歌うようになりました」

 

 

 オリジナルソングを作るようになったのは、歌手を本格的に目指すために必要だと感じたからだとか。

 

琴音「中学生になっても、ずっと小さい頃からの歌手になりたいという夢を変わらず持っていて、実現するために具体的にどうすればいいのかを、お母さんと話し合ったんです。自分より歌がうまい人は日本にも世界にもいっぱいいるんですよね。音楽が好きな人もいっぱいいるでしょうし、同じように歌手を目指してる人もいっぱいいる。そんな中でも自分の個性を発揮できるところ、『これが琴音だ』って示せる何かはどうやったら生まれるんだろうって考えているうちに、『オリジナルを作ってみたら?』って言われて。『じゃあ一曲作ってみようか、作り方も分からないけど』みたいな感じで作り始めました。まずは、お父さんのギターを持ち出して、お父さんが昔作った曲を教えてもらったり、曲を書きためていたファイルを見て勝手に参考にしたり。コード進行やメロディーののせ方をいろいろ試しているうちに、ギターを弾きながら歌っていけるかもしれないと感じました。最初は1曲だけだったので、ライブではカバー何曲かに加えて、1曲だけギターを持ってきて弾いて。少しずつレパートリーを増やして30分のステージをオリジナルだけでできるようになって。今は十数曲に増えました」

 

 お母さんとの二人三脚でスタートした音楽活動。初めて作った曲は支えてくれるお母さんへの曲でした。

 

琴音「お父さんは基本的にライブ活動にノータッチなので、ライブ活動はお母さんがずっと支えてくれています。一時期、オープンマイクで歌ったお店で毎週歌っていいよって言われた時期があったんですが、最初のころはお母さんのピアノ伴奏で私が歌っていたので、仕事を切り上げて帰ってきてピアノを弾いて、私が歌って、っていうことをずっとやってくれていました。移動なども含めて本当に感謝していて。オリジナル曲を作ろうってなった時、最初の曲はお母さんのために作ろうと思って『大切なあなたへ』を作りました。お母さんに初めて聞かせたときは、まだ完全に形が完成していない状態だったので、歌詞を書いた紙を並べて下を向いて弾き語りをしたんです。それで、パッて前を向いたらお母さんがめちゃくちゃ泣いていて(笑)。すごくうれしかったですね」

 

 お母さんへの感謝の気持ちを軽やかで温かいメロディーにのせた「大切なあなたへ」。初めての曲作りは意外とすんなりと進んだのだとか。

 

琴音「メロディーやコード進行のクセが何もない、まっさらな状態からスタートしたので、好きなようにできて割と作りやすかったですね。どんな歌を作るかはすぐに決まったので、取りかかるのも早かったですし、思い浮かぶのも早かったです。とにかく感謝の気持ちを伝えたいと思って、『ありがとう』って呟きながら、言葉の音の高さに合わせてそれらしいメロディーを合わせてみたらどうなるだろうって試しているうちに、サビの部分ができました。そのちょっとしたフレーズから始まって広がっていった感じかな。それ以降の曲作りは、とりあえずメロディーを作ってから、どういう内容の歌にしようかなって歌詞を考えています。メロディーを作りながら、曲調に合わせてテーマを考えたり、ふわっと浮かんだ言葉をキーワードにしたりしているので、その曲の印象や感じ方が材料になっていますね。だいたい家族や友達と話したことや、見知らぬ人と出会ったことなどから想像力を膨らませて歌詞を書いています」

 

 

 聴く人の心に温かな余韻を残してくれる琴音さんの楽曲の数々は、誰かを思う気持ちから生まれてきたんですね。

 

 さて、琴音さんの「原点」に迫る前編はここまで。

 後編では、一躍全国的に注目されるきっかけとなったテレビ番組のことや、7月にリリースされる初のミニアルバムのことなど、琴音さんの「今」をお届けします。お楽しみに。

 

◎追記

後編はこちらからチェック!