新潟の地で作られる器を季節の料理とともにめぐる連載。第3回目は新潟市秋葉区にある「もえぎ陶房」です。

自由な風を吹かせて 新津焼の伝統を支える
新潟市秋葉区に江戸時代から伝わる「新津焼」。地元・秋葉山の土と石油を燃料とした焼き窯を用いて、徳利や植木鉢、すり鉢といった実用的な陶器が盛んに作られていた時代があった。その歴史と伝統を現代に復活させるため、160年余りの歴史を持つ「西潟製陶所」の6代目として、新津焼をたった一人で受け継ぐことを決意した押味くみこさん。

叔父と一緒に始めた「もえぎ陶房」を2020年に建て直し、作品作りや日常使いの器作り、陶芸教室などを精力的に行っている。「使う人の想像力を大事にしたい」と語る押味さんが作る器には、決まった用途はない。くすっと笑みがこぼれるかわいい器から、きりっと渋めの器まで作風もさまざまで自由。釉薬も限定することなく、多彩にそろえている。

「色のない人生はつまらないと思うから、釉薬は彩り豊かに」「手に取った人に幸せが訪れてほしいから、青い鳥をモチーフに」と、もえぎ陶房を作るすべての要素に理由があり、作品一つ一つに明確なメッセージが込められている。

「でも、私自身主婦でもあるので、使いやすさは大事にしています」。そう、一見、個性的な器も使ってみると、どんな料理もおいしそうに受け止めてくれて、自然と食卓になじむ。そして驚くほど手馴染みがいい。今日はどう使おう、明日は何を盛り付けよう…そんなワクワクをもたらしてくれるもえぎ陶房の器。不思議な魅力を持っている。

もえぎ陶房の器の数々




作陶家Profile
押味くみこさん/新潟市秋葉区生まれ。東北芸術工科大学・大学院で陶芸を学び、卒業後「西潟製陶所」の中に叔父とともに「もえぎ陶房」を設立。西潟製陶所の伝統を守りつつ、新たな風を取り入れながら新津焼の復興を支える。
店舗情報
店舗名 | 新津焼 西潟本家 もえぎ陶房(にいつやき にしかたほんけ もえぎとうぼう) |
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住所 | 新潟市秋葉区滝谷本町2-5 |
TEL | 090-8252-1856 |
営業時間 | 10時~18時 |
定休日 | 日~木曜 |
駐車場 | 4台 |
備考 | 陶芸教室や陶芸体験も開催。詳しくは直接問い合わせを。 |
photo:中田洋介 <中田写真事務所>