新潟の地で作られる器を季節の料理とともにめぐる連載。第9回目は新発田市にある「ギャラリーショップ草舟」です。

おいしいごはんに出会ったり、ひっそりと静かな夜があったり…でこぼことした平野さんの毎日がフチまでめいっぱい描かれた7寸皿(各6,600円)には、ご近所にあるカフェ「sanasi cafe」のタルトをのせて。

またとない日々を綴った まるで絵日記のような器

まるで絵本の世界から飛び出したようなカラフルで幻想的な世界。描かれているモチーフは猫が中心。それもどこか気の抜けた、なんとも愛くるしい猫。作り手の平野照子さんは作陶家であり、「ギャラリーショップ 草舟」のオーナーでもある。もちろん猫と暮らし、猫の保護活動にも力を入れている。

ゆるっとしていて、どこか力の抜けた猫や動物たちの姿が、心をほぐしてくれる。渋いアースカラーが、絵柄の魅力を引き立てる。

各地から集めた猫にまつわる作品を展示販売する企画展「猫だすけ展」は、今年で8回目を迎えた。「助け」と新潟弁の「だすけ」を掛けたこの企画展、売り上げの一部は猫の保護活動に寄付しているそう。もともとはオブジェ作家として長年活動しており、近年は器作りにも力を入れている。

ギャラリーショップ草舟は、ご自宅の一室を改装した小さなお店。器のほかに、オブジェや布製品など、平野さんが集めてきた作家さんの作品が並ぶ。

平野さんの器に描かれるのは、漆黒の夜空に浮かぶ星や、夜の庭に訪れる野生のフクロウ、今日見つけた美しい草花、おいしかったお団子…豊かな自然に囲まれた新発田市菅谷での暮らしで起こる日々のこと。

タルトをのせたプレートには、こんな絵柄が。

「絵日記を付けるような感覚で器作りをしているのかもしれません。だから、同じ絵柄は二度と描けないんです」。

取材時に心惹かれた作品がこちら。スプーンとしてはもちろん、豆皿として、カトラリーレストとして、小物入れとして、さまざまな使い方ができるかわいらしい猫作品。

どの作品も一期一会。ギャラリーに足を運ぶたび、出会える作品は変わっているかもしれない。けれど、それもまたアートに触れる楽しみの一つ。

猫をモチーフにしたオブジェも、なんともいえない愛くるしさ。

この愛くるしい器はもちろん、長い月日をかけて計画した月ごとに変わる企画展では、さまざまなジャンルで活躍する作家の作品にも出会える。平野さんのギャラリーは週末限定、ぜひ訪れてほしい。

作家の平野照子さん。「例えば、同じ3,000円を使うにしても器は一生モノですから。いろいろな作品に触れてほしいです。きっと毎日が豊かになりますよ」。

平野照子さんの器の数々

5寸皿(各4,950円)と6寸皿(各5,170円)。器に使う釉薬は、山から採ってきた植物で平野さん自ら作ったもの。これぞまさにアースカラー。落ち着いた色合いなので、ユニークな絵柄をより一層、温かく優しい印象に仕上げてくれる。
色彩豊かな平皿とは雰囲気の異なるフリーカップ(各4,104円)。そばちょこにしても、コーヒーカップとして使っても、ちょっとした副菜を入れてもいい。フリーカップは幅広く使えるのが魅力。藍色と土色のコントラストが渋く、どこか野性味を感じる潔さ。
なんと、写真上のふたつ(いや二匹)はコーヒードリッパー。その名も、にゃんドリッパー(各8,250円)。薬味入れやカトラリーレストとしても使えるコーヒースプーン(各2,200円)も一緒なら、朝からご機嫌なコーヒータイムを楽しめそう。
こちらも7寸皿(各6,600円)。右ページの7寸皿とはまた異なる絵柄。ちなみに7寸皿は、取り皿やパン皿として使い勝手のいいサイズ感。「このゆるっとした表情やぼてっとしたポーズ、猫好きの人ならわかると思います(笑)」と平野さん。

作家Profile
平野照子さん/宮城県出身。2011年に起きた東日本大震災で多くの友人を失ったことをきっかけに、「力の限り精一杯生き抜こう」と、ギャラリーを開設。作陶家とギャラリーオーナーの両輪で、陶芸の世界に携わっている。

店舗情報

店舗名 ギャラリーショップ 草舟
住所

新発田市菅谷1667-4 

TEL 0254-29-0260
営業時間 11時~18時※各企画展の最終日は17時まで
定休日 月~金曜
駐車場 1台
外部リンク https://kusafune.stores.jp/
備考

陶芸教室も開催。詳しくは問い合わせを。

photo:中田洋介 <中田写真事務所>