新潟の地で作られる器を季節の料理とともにめぐる連載。第6回目は弥彦村にある「莢陶窯(きょうとうがま)」です。

黒陶に瑠璃色の釉薬を流し掛けて焼いた黒陶瑠璃流し掛け(3,500円)には、弥彦名物のイカメンチをのせて。「弥彦ブリューイングタップルームのイカメンチがおいしくて。今日は撮影のために朝から揚げたてを用意してもらったんだよ」(菅原さん)。焼き締めの湯冷まし(3,000円)はソース入れとしても。

思わず手に取りたくなる 個性豊かなユニークさ

弥彦山の麓、木々に囲まれた弥彦参道杉並木の先にひっそりと工房を構える莢陶窯。もともと設計士として商業建築の世界で活躍していた菅原 洋さんが、「いつかはこの手で“用の美”としての土の器を作りたい」と、この地に移住し、開窯した。

作陶家の菅原 洋さん。かつて、韓国のお師匠のもとへ陶芸を学びに行っていた時期もあるほど。

工房には小さな売り場が併設されており、壁いっぱいに所狭しと器が並ぶ。30種ほどの釉薬を使い分けるという菅原さんの作品は、色合いや絵柄が実に個性豊か。

売り場に並ぶ器。たくさんあって、使い道を想像しながら、選ぶのがほんとうに楽しい。

弥彦村の銘菓「玉兎」や、西蒲区が誇る美しい景観「夏井のハザ木」を描いた器がある一方、女体をモチーフにしたというアーティスティックな器や花器もある。

釉薬も実にいろいろ。器に盛る料理や飲み物に合わせて、使い分けることができる幅広さ。

形もユニークで、「これは何に使うんだろう」「これには何を入れよう」と、思わず手に取ってみたくなる作品ばかりだ。「長いこと使ってほしいから、扱いやすいように、薄く、軽く仕上がるよう心掛けています。あと、器の用途と色味の関係も大事にしているかな。例えば、ごはん茶碗ならごはんが映えるように、コーヒーカップならコーヒーの色味を邪魔しないようにといった具合にね」と菅原さん。

白髪に髭を貯えた風貌はまさに芸術家といった雰囲気だが、気さくで話しやすく、しかも話し始めると、芸術に対する深い愛情が止まらない。菅原さんとの会話の中にもさまざまな発見がある。

こちらは花器。作品を並べるレイアウトにも菅原さんらしさが出ている。

ぽんしゅ館 新潟驛店」や「いわむろや」などでも取り扱いがあるが、 莢陶窯の器はぜひ工房で触れてほしい。

莢陶窯の器の数々

夫婦茶碗セット(4,850円)。鉄絵の具を付けた刷毛で「刷毛目(はけめ)」と呼ばれる模様を描いた「鉄絵の具 刷毛引き」シリーズ。反り鉢のような形状をしているので、ゴマあえやきんぴらごぼうといった副菜を盛る小鉢としても活躍する。
「織部流し掛け」シリーズの酒注ぎ(3,850円)とぐい呑み(各1,850円)。白化粧をしてから、緑に焼きあがる織部釉をかけ、さらにフチまわりにまた釉薬をかけるといった3層の色使いが独特。織部の美しいガラス質が涼やかな雰囲気を放ち、これからの季節にぴったり。
こちらも「織部流し掛け」シリーズ。左から、ごはん茶碗中(2,550円)、ごはん茶碗小(2,050円)、ごはん茶碗大(2,800円)。胴の下部分がシュッと反っていて、これまた一般的な茶碗とは少し趣きの異なる、スタイリッシュな印象。微妙な形の違いから、手作りのぬくもりを感じる。
カップ&ソーサー(各3,850円)。ぽってりとかわいらしい雰囲気を放つしのぎ模様と、ちょっと渋めなコンパクトなデザイン。カップの持ち手に指を入れた時に指がすべらないよう、幅広い持ち手に。いつものコーヒータイムをちょっと贅沢な時間に変えてくれそう。

作陶家Profile
菅原 洋さん/東京都出身。日本大学芸術部工業デザイン学科で学んだ後、大手ゼネコンで20年余、設計士として勤務。その後、弥彦村に移住し開窯。日用品としての器からお茶道具まで、さまざまな陶器を作成している。

店舗情報

店舗名 アトリエ・プチ・ポワ 莢陶窯
住所

西蒲原郡弥彦村弥彦3407-1 

TEL 0256-94-5410 
営業時間 9時~17時
定休日 月曜
駐車場 2台
備考

陶芸教室も実施中。詳しくは問い合わせを

photo:中田洋介 <中田写真事務所>