インディーズ時代に発表した「アップルティー」のMV(ミュージックビデオ)が若い世代を中心に大きな話題を集め、7月にミニアルバム「花火の魔法」でメジャーデビューを果たしたシンガー・杏沙子(あさこ)さん。群を抜いたポップセンスを生かしたソングライティングと、チャーミングな歌声でファンを魅了する彼女がシンガーを目指すようになった背景には、家族の影響があるそうです。

 

 

「私の家族はとても仲が良くて、家族全員でカラオケに行くことが恒例になっているほど、みんな音楽好きなんです。小さい頃から、母や姉と気になったアーティストの曲を集めて車で聴いていたので、世代問わず幅広いアーティストの歌謡曲やJ-POPを自然に歌っていました。中でも、槇原敬之さんやaikoさんをよく聴いていたので自然とシンガーソングライターに憧れを持つようになっていましたね。小学校3、4年生ぐらいの頃には歌手になりたいという夢をなんとなく持っていましたが、中学校2年生の時に、いきものがかりさんのライブを観に行って、『やっぱり私は歌う人になりたい!』とはっきり思いました」

 

 そんな思いを抱えながら杏沙子さんは高校に進学。杏沙子さんの高校には入りたかった軽音部がなかったため、高校2年生の夏に学園祭に向けてバンドを組みました。

 

「一番最初にライブで歌った曲は、いきものがかりさんの『コイスルオトメ』でした。軽音部がないから、体育館は使わせてもらえなくて、ぎゅうぎゅうの音楽室でライブをしたんです。めちゃくちゃ緊張したんですけど、すごく楽しくて。『私はやっぱりこれがやりたいんだな』って、腑に落ちたというか、あらためて実感しました。ライブを録音してた方がいて、その音源を『聴きたい!』ってみんなが言ってくれたのがすごくうれしかったのを覚えていますね」

 

 「歌手になりたい!」という強い思いを抱き、その夢に向かって行動する一方、周囲にその夢を公言することへ葛藤もあったそうです。

 

「小学校の卒業文集で将来の夢に『歌手』って書こうと思ったんですけど、恥ずかしくて書けなくて、『音楽関係の人』って書いたんですよ。だいぶ濁して(笑)。歌手になりたいっていうことはお母さんにも言えなかったし、もちろん友達にも言えなかった。高校生の時に進路の話が出て、母に『オーディションを受けてみたい』って思い切って話したんですが、『まず先に大学受験をしなさい』と言われて何もできず。大学で上京して、歌手への道に踏み出すか踏み出さないかって時に、未来への募る思いやもやもやが爆発して、初めて曲を作ったんです。何かのきっかけになればいいな、と思って。それがインディーズで初めて出した『道』という曲です。そこから活動が本格的にスタートしていきました

 

「これからは120%で臨まなきゃいけないなって」(次のページへ)