1990年代初めに「愛は勝つ」が大ヒットし、国民的アーティストとなったKANさんですが、それ以降もさまざまな音楽的試みに挑戦してきました。その成果の一つが、自作曲を自ら丁寧に編曲した弦楽四重奏の響きと共に奏でること。2017年3月には、その弦楽四重奏と共にレコーディングしたセルフカバーアルバム「la RINASCENTE」を発売。コンサートツアーも開催し、大好評を博しました。

 

 そして今年、10月10日にセルフカバーアルバムの第2弾を発売。続けて、コンサートツアーの第2弾をスタートし、11月10日(土)には、新潟で初開催されます。

 

 そんなKANさんに弦楽四重奏の編曲に取り組もうと思ったきっかけや、今ツアーの魅力をたっぷり語っていただきました。

 

 

「2012年に東京で、自分のツアーとは全く別に単発でライブをする機会があったんです。そこで今までにやった事のないことをやってみようと思って、弦楽四重奏と僕のピアノだけで演奏することを考えました。それまでも、ドラム、ギター、ベース、キーボードというバンドの基本形の上にストリングスをのせることは、レコーディングなどでしていましたが、その時に初めて僕と弦4人だけでどんなものができるか試してみたかったんです。そこで初めてコンサート用にカルテットのアレンジを十数曲作りました」

 

 「新しいことに挑戦したい」という探究心を原動力に、弦楽四重奏の編曲に取り組み始めたKANさん。音楽に関する知識も経験も豊富にお持ちですが、新たな編成での再構築は全く別物だったと話します。

 

「実際に編曲をしながら、今までやってきたバンドサウンドにのせるストリングスアレンジとは全く意味が違うんだと気が付きました。まず、ポップス音楽に不可欠なリズム隊であるドラムとベースがいない。しかも、弦楽器は基本的に単音楽器なので、その中でバリエーションを付けなければいけない。それを経験して、ものすごく難しいという事を知り、ちゃんと出来るようにならないといけないなと感じたんです。すごく難しいけれど、逆にこれが弦の編曲の基本であるような気がしたんですよね。4人と僕だけで、どれだけの事が出来るかをちゃんと突き詰められれば、今後またバンドの上にのせる弦アレンジを作る時も、もっと自由な発想になれるかもしれない。それで一度きちんと形にしたいと思い、CDを作ってコンサートツアーも昨年実現しました」

 

「制約がある中で、面白いものを作りたい」(次のページへ)