新潟Komachi4月号「ずっと愛されるラーメン」特集の巻頭では、みんなが愛してやまないラーメン屋、食堂、中華料理店を紹介しています。
思い出すだけで、今すぐ食べたくなる「あの店のあの味」。今日も暖簾をくぐった先に待っています。

今回は新潟あっさりしょうゆラーメンを代表する「三吉屋」をピックアップ。知ってそうで知らなかった歴史、ご主人の思いを知れば、中華そばがもっともっとおいしくなること間違いなしです。


「原点の味を忠実に、食べ手を思う粋な心」

「三吉屋」のルーツは靴屋。もともとは靴屋から商売が始まり、新潟大火で焼け出されて廃業。そこから一転、屋台でラーメン店をスタートして歴史は始まりました。以来ずっと市民に愛され、今では新潟5大ラーメンのひとつ「新潟あっさりしょうゆ」を代表する名店として、この街になくてはならない存在となっています。

ここ新潟市で「三吉屋」という屋号を掲げるラーメン店は3店舗。初代・坂田正次さんの3人の息子たちがそれぞれ暖簾を守り、父親が生み出した味を継いでいます。三吉屋の代名詞「中華そば」はどの店でも食べることができますが、「もやしそば」を楽しめるのは、けやき通り店だけ。

「13年前に独立するまでは、長男の信濃町店と次男の本店(西堀)で25年ほど腕を磨きました。そして、いざ自分の店を持つにあたって、中華そばのほかにもうひとつ武器が必要だった。そこで考案したのがもやしそばです」と語るのは、坂田家の三男・浩さん。

ベースの中華そばに、塩コショウで炒めたモヤシと細切りチャーシューがこんもり。香り付けに回しかけたゴマ油の風味が食欲をくすぐります。「あんかけも考えましたが、スープの優しいうま味や麺の繊細な口当たりをどうしても生かしたくて。だから味付けもシンプルなんです」。その言葉通り、モヤシのはつらつとした食感とゴマ油の香りがアクセントになって、淡麗スープの穏やかな味わいを際立てています。

「場所柄もあってか、キャリーケースを引いて来るサラリーマンもいれば、飲んだ後に寄ってくれる常連さんもいて、ありがたいです。でも、一番うれしいのは、本店の味を知っているお客さんにもおいしいって言ってもらえること。ちゃんと味を守れていると再認識できます」。

原点は本店の味。その味を作る上で最も大事にしているのは、しっかりとお客さんの顔を見ることです。「この人は薄味が好みだったな。こっちの人は酔ってるから、麺はちょっと少なめに。そんな風に、それぞれがおいしくラーメンを完食してもらえるように心掛けています。だから、朝から晩まで、ちゃんと自分が調理場に立つ。満足して帰ってもらいたいですからね」


勤務はシフト、料理はレシピ通り、接客はマニュアルを遵守、というのが当たり前の時代。浩さんのような気持ちで店に立ち続けるのは、簡単なことではありません。名店の看板にあぐらをかかず、実直に仕事へ向かう姿勢。長く愛されている理由が垣間見えた瞬間でした。

 

三吉屋 けやき通り店
[住所]新潟市中央区米山1-6-10 
[電話番号]025-241-0937
[営業時間]11時~14時、17時30分~23時
[定休日]月・火曜


このほか、「信吉屋」「喜京屋」「広来飯店 学校町店」「いこい食堂」こまどり」「食堂小政」も巻頭ページでご紹介しています。どのお店も地元で愛され続けている名店ばかり。私たちが愛している一杯の物語の続きは、Komachi4月号(2018年2月25日発売号)にて。